「大学に通う意味」が根本的に問われているワケ リモートで提供できない価値はいったい何か

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実際、大学のオンライン講義はかなり進展しています。

文部科学省が、全国の大学と高等専門学校の1060校について、9月以降の後期授業の実施方法を調査した結果によると、すべての授業を対面で行うのは19.3%にすぎず、80.1%はオンラインなどの遠隔授業との併用です。

上で述べた学生の不満は、こうしたこととは異質のものです。

そこで提起されているのは、「オンライン講義では代替しえないものがある」、したがって「オンライン講義に伴う技術的問題が解決されたとしても、なおリアルな講義が必要」ということです。

これは、大学教育の本質的に関わる難しい問題を含んでいます。

学生の選別と評価は重要な機能

単に知識を伝達するというだけのことなら、大教室で大勢の学生に講義をするより、オンラインで講義をするほうが優れている場合が少なくありません。

教員の顔もよく見えない大教室よりは、ずっとよいでしょう。また、資料共有なども行えます。

「教える=知識を与える」ということだけを考えれば、オンラインに格段の問題はないと思われます。

それにもかかわらず学生から不満の声が上がるのは、大学が提供している機能がこれだけではないことを示しています。それは、いったい何なのでしょうか?

第1に、学生の選別と評価があります。

「大学の機能が教えることだけではなく、学生を評価することにある」という意見は、昔から唱えられてきました。

まず、大学には学生定員があり、限られた人数しか入学できません。

したがって、とくに有名校の場合はそこに入学できただけで、すでに意味があるのです。

さらに、入学後の学生に対して試験を行い、採点し、最終的には卒業証書や学位を与えます。こうした評価は、その後就職などの機会に重要な意味を持ちます。

そのため、学生の能力を向上させるよりは、学生を評価することのほうが、大学の重要な機能だというのです。とくに文系の学部について、こうしたことが言われます。

では、オンラインでは学生を評価できないかといえば、もちろんそんなことはありません。

仮に学生定員を増やしてしまえばそうなるでしょうが、定員を変えない限りにおいては、条件はいまとあまり変わらないはずです。

オンラインでは試験をやりにくいということはあるでしょう。しかし、これに対しては、技術的に対応可能であると考えられます。

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