「大学に通う意味」が根本的に問われているワケ リモートで提供できない価値はいったい何か

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まとめれば、こういうことです。

リアルな劇場の最前列に近い席で世界最高の公演を見たり聞いたりすることができれば、もちろんそれはリモートより優れています。しかし、劇場の天井桟敷の席で柱の影に隠れて三流のパフォーマンスを見ることと、リモートを比べたらどうでしょうか? 多分リモートのほうが優れているでしょう。

リアルな公演には、もう1つの問題があります。

例えば、シェイクスピアの戯曲はいくつもありますが、実際の興行では、集客を考えると上演できるものに制約が加わります。

シェイクスピアの戯曲でそうなのですから、ましてや、名の知れない作者の作品には強い制約が加わるでしょう。

これはバレエについても言えます。上演されるのは「白鳥の湖」ばかりということになりかねません。

しかし、めったに上演されないものを見たいと考えている観客もいるのです。

リモート公演はロングテールに対応できる

これは「ロングテール」と言われる需要です。そうしたものにリアルで対応するのは難しいことです。

書籍については、アマゾンがロングテールに対応しました。それと同じことが、リモート公演でできるはずです。

旅行についても同じことが言えるかもしれません。

アフリカの奥地に行きたいのはやまやまながら、実際に旅行するのは極めて難しい。しかしリモートであれば行けるでしょう。

従来のような万人向けのテレビの旅行番組ではなくて、少数の人間の好みに応じたリモート旅行の提供がすでに始まっています。これも、ロングテール需要に対応しようというものです。

残った問題は、どのようにしてこうしたサービスの需要と供給をマッチングさせることができるかです。

原理的には、マッチングサイトを作ればよいわけです。インターネットには、すでにさまざまなモノやサービスのマッチングサイトが作られています。同じものが新しい分野にも作られることが期待されます。

野口 悠紀雄 一橋大学名誉教授

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のぐち ゆきお / Yukio Noguchi

1940年、東京に生まれる。 1963年、東京大学工学部卒業。 1964年、大蔵省入省。 1972年、エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。 一橋大学教授、東京大学教授(先端経済工学研究センター長)、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、一橋大学名誉教授。専門は日本経済論。『中国が世界を攪乱する』(東洋経済新報社 )、『書くことについて』(角川新書)、『リープフロッグ』逆転勝ちの経済学(文春新書)など著書多数。

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