テクノロジーの進歩が問う「生きること」の意味 京大前総長が考える「遊動民」という生き方
人生100年時代とも言われるように、人類はかつてないほど長生きするようになった。しかし、その結果として不自由な体を抱え、病気に苦しめられながら、長くつらい晩年を過ごすのであれば、私たちはよりよく生きるようになったと言えるのだろうか?
だが、もし若く健康でいられる時期を長くできたらどうだろうか? いくつになっても若い体や心のままで生きることが可能となったとき、社会、ビジネス、あなたの人生はどう変わるのだろうか?
ハーバード大学医学大学院の教授で、老化研究の第一人者であるデビッド・A・シンクレア氏が、「老いは治療可能な病」であることを示した、全米ベストセラー『LIFESPAN(ライフスパン): 老いなき世界』の日本語版がついに刊行された。
「人間とはどう生きるべきか。それを問う時代だということを認識させてくれる1冊です」──そう語る山極壽一・京都大学前総長は、人類学・霊長類学を専門とする視点から、老いなき世界をどう見るのか。前・後編でお届けする。
※前編はこちら(京大前総長「哲学なき技術先行時代は終わる」)
「どう生きるべきか」が問われる時代
『ライフスパン』には、信じがたいほど長寿の動物が紹介されています。
例えば、ニシオンデンザメは150歳にならないと性的に成熟せず、510歳に達した個体がいる。そして、ホッキョククジラには、猟師に仕留められた時点で211歳だった個体がいたと。これには僕も驚きました。
ここには、秘密があるはずです。つまり、生物は種類によって長寿のものとそうでないものがあり、それは、単なる環境条件や栄養条件だけではなく、なんらかの遺伝子で決められた部分があるのではないか、と。著者のデビッド・シンクレア氏は、その秘密を突き止めることができれば、人間も長寿命を達成できるだろうと考えています。
ただ、そうなると、人生観が変わるということを考えなければなりません。
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