こうしてゼンショーは危機を乗り越えてきた ゼンショー・小川社長が語る経営哲学(3)
――牛丼で、ある意味、たたみかけるような積極さをやっていらして、しかし、一方でウェンディーズはやめた。
やめた。
――あと、いろんな会社を完全子会社化されて、これは本格的に手を入れると。そういう意味の戦線整理を一方でやっていらっしゃると。
ここ2年間はそうですね。さっきお話ししたように、やはり業態の見極めということが買収前からいちばん大事なんだけど、買収後、ほとんど成功してきているんです。ウェンディーズについても黒字化できたんだけど……。
――黒字化したんですか。
ええ。だけど、先を考えたとき、拡大できるかと考えたときに、その努力をやってきたんですけど、やっぱり難しいなというのが結論でしたよね。ウェンディーズについていえばね。
なぜかというと、一つは、やっぱり米国のフランチャイズということですよね。ですから、ゼンショーのよさを生かした商品政策ということが非常にやりにくかった。当時、オハイオ州にウェンディーズの本社があって僕も何回か行っているんですけども、当然そうですよね。
ウェンディーズブランドの本家としては、やっぱりオハイオで決裁して、新しい商品を導入するにしても何をやるにしてもオハイオが決めるんだと。あなたたちはエリアフランチャイジーでしょうということが根幹としてあるし、契約もそうなわけで、やっぱり契約社会ですから、根幹として、意思決定、それから環境に対する対応、商品を含め、非常に時間かかる、ストレスがある。だから、今後やっていくうえでトータルで見れば、力を使うほど効果はないのではないかと総合判断して、だったら、もうやめたほうがいいという判断をしたんです。
もう一つは、途中でウェンディーズがファンドに買われたんです。アービーズという、ローストビーフサンドイッチのチェーンが米国でありますよね。アービーズを買っていたファンドがウェンディーズも買って合併させたんです。アービーズ・アンド・ウェンディーズという形にして、ファンドがオーナーになって、そうすると、なおさら意思決定のメカニズムが悪くなったんです。
われわれからすると、オハイオと時間をかけてやってきて、それなりにゼンショーの力量も向こうとしてはわかってきていたのに、またゼロからやり直し。アメリカ人というのは契約書ベースですからね。せっかくある程度のフレキシビリティーをオハイオの本部とわれわれの間で作ってきたのに、またオーナーが代わって、今度は契約書に書いてないじゃないかとか、どういう情報に従ってやるのかと、そういうレベルになってきたわけです。ということも含めて、これは労力がかかって今後やりにくいなという判断ですよね。向こうの変更も相まってということです。
戦線整理はこれで一段落
――小川さんはいったん傘下に入れたもの、あるいは、いったん起こした事業、ダメならダメで、パッと断念する。それはかなりテキパキ判断される方……。
業態としての撤退は初めてでしょう。
――なか卯とか、あれはどうされるんですか。
なか卯はJASDAQ上場だったけど、100%子会社にしたわけです。
――本格的に。
ウェンディーズとは全然違う話。その心は、なか卯は上場企業としてやってきたんだけど、広い意味で言えば、すき家と同じカテゴリーですよね、牛丼。やはり、すき家で確立してきたノウハウ、ソフトウェアをもっと有効活用しようと。
ご承知のように、上場企業というのは、やはり独自性がかなり強いですから、役員の変更、トップの変更を含めた手続きで、ものすごい時間を食いますよね。そういうことではなくて、迅速な対応という体制を作り、すき家のノウハウを、虚心坦懐にいいところはもっと活用して、なか卯の収益体質をよくしていこうという考え方です。
やっぱり今、よかったと思います。非常に近くなりました。スピードはある。商品政策とか、それから管理体制の強化とか、今、着実に進んでいるんです。何だかんだ言って、前は独自の上場企業ですから。
――大体、戦線整理はこれで一段落。
一段落と考えています。