こうしてゼンショーは危機を乗り越えてきた ゼンショー・小川社長が語る経営哲学(3)
それから、労働運動というのは僕らもやったけど、労使協調ということで、資本主義社会における労働運動の基本的なやり方というのは、多数派として形成されてきたのに、そうでない階級闘争主義、あるいは党派主義的な。組織内には2万人の中で3人しかいないくせに団体交渉をやれとか、あたかも2万人の働く人を代表しているかのように装う、そういう非常にセクト主義的な、大衆運動利用的なものはよくないんじゃないのと。シンパシーがあるみたい。
――でも、団交をやってもいいじゃないですか。つまり、少数派の組合として団交してやるのは、それはいいんじゃないですか。
われわれとしては、団交を言うのであれば、経営が対処するわけですから、やはり従業員の多数を代表したものと団交すべきであって、幾ら何でも2万人で3人なんて言って組合だと名乗って、首都圏青年ユニオンというのは外部勢力が牛耳っているわけですからね。だから、そこと団交するということは不適切ではないかと。
――でも、ゼンショーのレピュテーションリスクというのを考えたら、そんなこと、大した問題ではないんじゃないですか。大した問題じゃないというのは、逆に団交に応じてやったって、団交の席上で小川さんが、実は逆におカネを窃盗したじゃないかという議論をすればいい。逆の話じゃないんですか。
そういうレベルの組織じゃないでしょう。騒動屋だもの。
――その点、小川さんは頑なですね。
頑なというか、今回は和解した。
――和解したということは、向こうの言い分を認めたということなんですか。
全部認めていませんよ。だけど、和解というのはそういうものじゃないですか。お互いに100%突っ張ってもしようがないから、裁判所が提示した和解案があるわけだから、わかりましたと。じゃあ、和解しようと。だけど、相手は和解の態度ではないわけですね。だって、それをまたネタにして、記者会見をして騒いでいるわけだから、やっぱり騒動屋じゃないかと。
――中央労働委員会が命令を出しているんでしょう。
中労委、あれはまた別じゃない……。中労委は別ですよね。
もっとフレキシブルな見方を
――仙台の話は別にしても、アルバイトを使っていらっしゃるということは非常に多いわけで、一方で、もちろん生産性を上げなきゃいけない。ということは、人の使い方はほかの企業と違って細心の注意が必要なんだろうなと。
ほかの企業と違ってというのは……。
――普通の製造業以上にね。さっき小川さんがおっしゃったサッカー型をやってもらわなきゃいけない。
以上にというか、基本的に、パートタイマー、アルバイトがウチへ来ると言っているわけです。要するに、船長から始まって、同じ店舗という船に乗るメンバーですよね。そこでみんなが目的を持って汗をかいて、お客様に喜んでいただくということがやりがいであり、そして全体としては、飢餓と貧困をなくすんだという理念の企業の中で、自分が汗をかいていることが社会の役に立っていくということで生きがいですよね。
だから、やりがいと生きがいの両方を手にできる職場だと考えているんです。もちろん、もっと賃金が欲しいとか、働く以上はいろいろあると思うんだけど、それは全体の中でバランスをとって考えていくしかないわけですからね。
それは日本の社会の中で、特に昭和40年代後半以降、労使協調的にやってこられたことであって、ただ、この間、メディアにも責任あると思うんだけども、派遣村問題から始まって、リーマンショックで情勢が非常に厳しい。そういう中で、経済学的にはセーフティーネットをどういうふうに設けるかという問題が一つであるんだけども、拡散させちゃって、派遣はけしからんとか、非正規雇用というのは不当であって、正規雇用化すべしとか。
亀井(静香)さんなんかは真に受けて、郵政正規雇用化へ向けてアクションしちゃっているんだけど、さっき言ったように、それはわかってないわけで、製造業的な正規社員、9時~5時ラインを動かす、こういう、かつての日本経済の主力のやり方でもって全部を見ているわけであって、それは違いますよと。サービス経済産業化の中で、もっとフレキシブルな見方をしていかないと派遣がいかんとか、全部、正規雇用化すべきだとか。じゃあ、正規という言葉はあるけど、何なのよということですよね。
(撮影:今 祥雄)
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