こうしてゼンショーは危機を乗り越えてきた ゼンショー・小川社長が語る経営哲学(3)

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ですから、ギョーザ事件が起きたときも、すかいらーくさんは、使いませんとか、すぐ日和っちゃったけど、そうじゃなくて、われわれは米国産だろうが、中国産だろうが、きちんと安全保証できる体制を作り、そして安全なものは使うし、安全が保証できないのであれば、たとえ米国産であっても使ってこなかったし、中国産についてもまったく同じだと。

――確認できれば使っていいだろうと。

国産でもそうだと。日本産でも、使っていいもの、悪いもの、やっぱりあるわけですよね。それはきちっとした農薬検査も中央分析センターへ投資してやっているし、そういう基本的な安全の確保ということを日常的にやりながら、その基準に合ったものは産地を問わず、クオリティがよければ入れるし、安全性に疑問がある場合は米国産牛肉が一つの例であるように、それはわれわれとして安全が確保されるまでは使いませんという説明をメディアにもしてきたわけです。それはメディアにも、かなり理解してもらえた。

――ギョーザ事件のときですか。

そうですね。いわゆる中国産何がしという嵐がメディアに吹き荒れたときですね。やっぱりメディアも、中国だからダメなんだとか。おたくも使っているんですかとか。僕は「メディアファシズム」と呼んでいるんです。そういうときは一緒になっちゃうでしょう。二元論的な。

ただ、対応は楽でした。スタンスは決まっているので、みんな、ずっと、すべてに対して同じことを繰り返せばいいことなので。みんな聞くことも同じですしね。

――パターン化している。一つ伺いたいのは小川さんの理念です。飢餓と貧困をなくすと。この飢餓と貧困をなくすということがゼンショーという会社を活性化させる。要するに、そこで働いてきた人たちを活性化させる本当のベースになっていると考えてよろしいんですか。

活性化させるじゃなくて、逆なんです。新卒の継続採用もずっとやっているわけです。採用についても、われわれの理念をパンフレットにし、採用担当に説明し、一貫して、それに共感する人、この指とまれ!なんですよね。いわゆる中途採用、シニアの採用もそうなんです。ですから、たとえ非常に高い能力であっても、われわれの理念に共感しない人は……。

――要らない、来なくていいと。

だって、ゼンショーというのはそういうポリシーでしょう。

アルバイター比率が高いのはいいこと

――ただ、実際にお店で働いている人は、ほとんどアルバイトの人でしょう。アルバイトの人たちにも小川さんの理念というのは浸透させていらっしゃるんですか。

いろんな社内メディアツールがありますけれども、それはそういう努力はしていますよね。ただし、パートタイマー、アルバイターはおっしゃるように比率が高いんだけど、それは僕はいいことだと思っている。

というのは、単なる安く使ってやろうというのではなくて、日本では、流通業の従業者が全従業者のうち72%。そういう流通サービス産業化が、日本経済も進んでいるわけです。米国だと、75%を超えているわけでしょう。だから、その中でフレックスな働き方を要求している人が非常に増えてくるわけです。社会自体、フレキシビリティが増えてきている。

つまり、工業国家だった段階では9時から5時で、サイレンが鳴るとベルトコンベアがとまって、お疲れさまで、みんなドッと帰ると。こういう部分というのは、就業者の中でも非常に少数派になっているんですよね。ただ慣性の法則で、学者とか官僚とか政府は、まだ工業日本、第2次産業主導時代の日本のイメージで、そうすると非正規従業員、けしからんとか、この間あったじゃないですか。そういう一つの古い価値観がまだ残っているんですよね。

だから、フレキシビリティのある雇用、それは週3回だけ働きたい人もいるし、それから昼の3時間だけ働きたい主婦もあるし、いろんな就業形態に対する働く側のニーズが多様化しているわけですよ。それと雇う側もサービス産業化して、9時~5時の工場じゃなくて、いろんな時間帯で人材が欲しいというマッチングが高度産業社会だと僕は思うんです。

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