こうしてゼンショーは危機を乗り越えてきた ゼンショー・小川社長が語る経営哲学(3)
グラフを見ますと、これがすき家です。2003年比、既存店ですよね。吉野家が今75でしょう。うちが139です。松屋さんは85です。2003年比で見ると、まだリカバリーできてない。
つまり、何かというと、BSEが発生してから、マーケット開拓ができていたのは、すき家だけなんですよ。ということを示しているんです。だから、僕は言っているんです。強気の創業社長の思い込みだろうと世間では思われているんですけれども、それはいいことなんですよ。小川は強気で、アントレプレナーで、イケイケドンドンでと思われているわけですが、それはいいことなんですよ。でも、バックグラウンドは正直じゃないかと。
今回もマーケット開拓ができている。長期トレンドも一時期、リーマンショックで落ちたんですよ。だけど、長期トレンドはこうでしょう。リカバリーできているじゃないかということなんです。彼らは下げた分、損しているんです。
経営というのは総合力
――すき家と松屋の差が出たというのは何ですか。
何でしょう(笑)。
――店舗数も増えていますし。
店舗数もうちがいちばん増えているでしょう。だけど、普通それをやるとカニバって(共食いになって)、既存店は減るんですよね。2003年12月、480店で、吉野家さんが980店で、ちょうどダブルスコアだったわけですね。松屋はうちより100店多かった。だから、うちはここから約1000店増やしているわけです。そうするとカニバってと。
今でも出店審査は毎週僕がやっているんだけれども、胃が痛いですよ。だって、すき家は物件が毎週たくさん挙がってくるけれども、全部調査して、オーケーの案件ですよ。胃が痛いですよ。なぜなら、既存店が食らうからですよ。
1500店出していて、どこに目をつぶって出しても周りの3店舗は影響を受けます。やっぱり下がるんです。何%下がるまでというのは全部計算できているんです。どういう収支変化になるのか。でも、総合的に見て、ROI(投下資本利益率)が基準以上確保されている物件のみオーケーを出しているんだけれども、それがこの5年間で言うと200店くらいです。だから、うちが厳しいんです。だけど、リカバリーできている。
ほかはウチに比べるとそんなに出店していない。吉野家さんがここから200店くらい、うちが1000店。だけど、マーケット開拓はできていない。それなのに下げる。安部さんも計算していると思う。それはそうでしょう。下げてもマーケット開拓できてないから、今度下げてもまた損する。
だけど、そうは言えないから、理屈は味にこだわっているとか、米国産がいいとか。プロだからお互いにそんなことはわかっているわけです。だけど、理屈がいる、と僕は思っています。米国産がいいと言い続けるしかないでしょう。その割に今度、豪州産を使ったりしているみたいだけれども。
――2社がうまく寄せているという部分もありますね。
それもあるでしょうね。でも、1000店出してきたというのは、よそから取っただけで追いつきますかね。ゼロになっているならわかるけれども。理論的に見て、マーケット開拓ができているわけよね。
――これからもパイは広がる……。
それはさっきも言ったように限界はあるんだけれども、すき家について言えば、まだ開拓できるし、足元もできている。
経営というのは総合力だから、こういうマーケット開拓をしていくのはどうしたらいいのかという積み上げをしてきているわけです。特にこの10年間、その努力の方向は合っていたなと。じゃないと、こういう構造にならないわけだから。それを支えてきたのは、やはり志を持った企業がやっているということでしょう。だって牛丼で一番になろうとかいう志であったら、もう達成感は結構あるでしょう。
――BSEを起点にした展開と、もう一つはさっきもおっしゃっていたリーマンショックがありましたよね。このときは小川さんも危機というか……。
あ、そうね。この2つの危機があってね。