こうしてゼンショーは危機を乗り越えてきた ゼンショー・小川社長が語る経営哲学(3)

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だから、レベル、クオリティを上げようと。1部上場企業としてウソをつくわけにはいかないから、わかりやすくレベルを上げて、コシヒカリ100%と。集約的にそう表現したんだけれども、そういうメッセージを消費者にきちんと伝えて、だけど280円と。

長いタームでも見てないと判断を誤る

――そろばんはどう合わせるんですか。

販売コストは増えるわけです。

――ボリューム増ですか。

うん。だから、さっき話したように、マーケット開拓できないのであれば、下げてはいけないわけです。できるのであれば、その原価を上げた分、数でもってカバーする。

非常にわかりやすく言えば、たとえば店が60万円の家賃で、月2万食売っているとします。1杯当たりの家賃は30円です。結構高いでしょう。でも、3万食売ったら、1杯当たりの家賃は20円です。以下同様で、わかりやすく言うと、家賃がフィックスドコストですよね。固定費。だから、数が増えれば1杯当たりのコストは下がる。

じゃあ、家賃だけかというと、そんなことはないでしょう。減価償却費も光熱費もね。電気代はどうなのかというと、ほとんど固定なんです。エアコンから冷蔵庫から電気だけれども、売り上げが増えたら電気代が増えるかというと、そんなに増えないですよ。増えるんですけれども、入客数と比べると傾きは非常に小さいんです。つまり、固定的な部分が大きい。そういう部分が非常に大きくあるので、販売個数がふやせれば原価アップ分を吸収できる、あるいはお釣りが来るかもしれない。そういうそろばんですよ。

――もっと下げれば販売個数が必ずついてくると、なぜ思われたんですか。

そこは基本的な価格など、市場に対して需給曲線があるでしょう。法則的にはそうなんです。ただ、具体的には今言ったように、すき家の牛丼においてはどうなのかという問題なわけです。すき家の牛丼についていえば、その需給曲線を踏まえたマーケットの拡大が可能であると。これは経営判断ですよ。

これはものすごく大きい判断だから、そう簡単にできないでしょう。これをやればディシジョンができるということは非常にアドバンテージですよ。今、吉野家が問題になっているけれども、吉野家さんだけではなくてね。

――吉野家がBSEで米国産に執着したがゆえに、かなりフラフラになっちゃいましたね。もう一発たたくというのは……。

それはないですよ。というのは、すき家は自分でマーケット開拓してきたわけです。牛丼というのはもっとポピュラーで、もっと多くの客層がもっと多くの購買動機で食べてくれるという僕の基本認識から出発して、一店舗から始めているわけです。

吉野家が会社更生法に至ったあのとき、300店くらいですよ。銀行はもうマーケットは飽和だろうとさんざん言っていたわけです。だけど、僕は防戦して、そうじゃない、始まったばかりだと。当時そういう考えだったのは、僕だけだったわけです。牛丼保守本流であるから、それをやってきただけです。

ただ、マーケットというのは限界もあるだろうし。そんなことは他人に言われなくても、やっているほうがいちばん念頭に置きながら、マーケット限界というのはあるんだと。だけど、開拓をやってきたということと、今やっていること、それから将来と、そういう視点で見ているから、今はまだ開拓できると。だから下げたんです。

言っちゃ悪いけれども、長期傾向は2000年比、2003年比というふうにゼンショーは見て、それは毎月公表している。

要するに、長期傾向です。既存店前年比というのはみんなが騒ぐようになって、大事なんだけれども、結構怪しいでしょう。だって、去年が足場だから、去年の足場のほうがよかったり、去年が大雨が降って悪かったりすれば、今年の前年比というのはそれにスライドしてこうなるわけですから。もうちょっと長いタームでも見てないと判断を誤るんですよね。

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