石炭火力発電所の休廃止政策がどうにも甘い訳 電力改革の現状、送電線空き容量は改善の兆し
しかし、卸電力市場では発電施設の固定費が回収できる保証がない、このままでは設備投資が滞り、電気の供給量が不足してしまうと指摘されました。「容量市場」は市場という名前がついていますが、電力会社に固定費を回収させる仕組みです。電力広域的運営推進機関が運営します。
――具体的には、どのように運営されますか。
山家:向こう4年後の需要のピーク時を考え、電力広域的運営推進機関がさまざまなデータを基にこのくらいは確保したいという需要(所要発電可能量)を決めます。それに対して、発電所を持つ電力会社が札を入れる。2024年度のオークション約定結果が9月14日に公表されました。
それによると、2024年度には総容量1億6769万キロワットの供給量が確保され、1キロワット当たりの価格は、今後作る設備の正味固定費用の9425円を超え、1万4137円という上限価格の水準で決まりました。この価格は、落札した電力会社(落札率は97%で、札を入れた会社のほとんどに当たる)の発電所から生じる電気に適用される。応札容量の4分の3は火力です。全体の平均応札価格は1キロワット当たり2182円でしたが、落札した会社は皆その6.5倍を手にする。電力会社全体に支払われるのは、経過措置分を差し引き、計1兆5987億円。これは送配電事業者、小売り電気事業者が負担します。利用者に転嫁されれば、結果的に電気料金は上がるでしょう。
火力発電の救済策と言われるワケ
――基本的に、大きな発電設備を持っている電力会社が儲かるということですか?
山家:そういうことです。だから火力発電の救済策であるとも言われています。もともと卸電力市場では燃料費が高い火力発電は不利になる。そこで「容量市場」で固定費を取り戻そうとしたわけですが、この結果を見ると、取り戻すどころかそれ以上をもらえる計算になる。設備を持っているだけで1年間左うちわに。非効率の石炭火力も、廃止する要因がなくなってしまうのではないでしょうか。
欧米では、電気を作るところを自由化して、電気のコストを下げていこうというのが王道です。基本的に市場の価格メカニズムにまかせており、シンプルな制度になっています。日本は複雑な制度になっていて、価格メカニズムが働きにくい。
――資源エネルギー庁の資料によると、アメリカにも「容量市場」があります。
山家:アメリカの「容量市場」と日本の「容量市場」には、決定的な違いがあります。アメリカでは、「容量市場」で落札した発電設備は、必ず卸電力市場に参加する義務があります。需給が逼迫して電気が足りなくなりそうなときには、運用者の指示に従って待機している電気を出さなくてはいけません。容量市場のおかげで全体の供給力が増えたら、その分が卸電力市場に出るので価格が下がります。アメリカでは、「容量市場」と卸電力市場は運営主体が同じです。日本では、2つの市場の運営主体は違い、関連していない。真似をしているように見せているが、根本的に制度が違うのです。
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