石炭火力発電所の休廃止政策がどうにも甘い訳 電力改革の現状、送電線空き容量は改善の兆し
来年3月には、東日本大震災に伴う東京電力福島第一原発事故から10年になる。日本政府は電力制度改革を進め、原子力発電への依存を減らして再生可能エネルギーの利用を進める方針を掲げてきた。一方で、原発事故後の日本が頼ったのは、石炭火力発電所。ところが今、石炭火力は世界中で廃止の風にさらされる。改革の現状は、どうなのか。国内外の電力事情に詳しい京都大学大学院の山家公雄特任教授が診断した。
真の電力自由化がようやく始まる。
――日本の電力制度改革は仕上げの段階に入りました。どのように評価していますか。
山家:7月3日、梶山経済産業大臣が発表した新方針を聞き、日本の電力自由化はようやく真の第一歩を踏み出すことになる、と思いました。
――7月3日の梶山大臣の発表は、「非効率石炭のフェードアウトおよび再エネの主力電源化に向けた送電線利用ルールの見直し」がテーマでした。送電線利用ルールの見直しに着目されたということですか。
山家:そうです。火力・原子力などの既存の発電所が優先して送電線を利用できる「先着優先」ルールを改める方向を、梶山大臣が言明しました。
――これまでの先着優先のルールとはどんなものでしたか。
山家:発電事業者は、発電した電気を消費者に送るために、まず送電線(系統)に接続して電気を流します。発電事業者と送電事業者が接続契約を結ぶタイミングが早いほうが、送電線を優先的に使えるというルールです。
送電線の容量を上回るような電気が流れることを「混雑」といいますが、そのときには、新しく接続契約を結んだ事業者が真っ先に出力を抑制しなければなりません。後発の再生可能エネルギーによる発電は不利になります。
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