石炭火力発電所の休廃止政策がどうにも甘い訳 電力改革の現状、送電線空き容量は改善の兆し

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――再生可能エネルギーを使った地域新電力の人から、大手電力会社は電気が余っても卸電力市場に出さないことがあるのではないか、という指摘を聞いたことがあります。

山家:日本の電力会社は、送電部門は分離しましたが、発電と小売りは東京電力と中部電力以外は一体ですよね。内部で小売り部門が発電部門から長期にわたって電気を買う相対契約を結んでいます。卸電力市場に電気を出さなくてもいい。容量市場を通して高い値段でがっぽり儲けておいて、卸電力市場は関係ないよ、ということも可能です。

卸電力市場と容量市場(電力広域的運営推進機関の公表資料から)

再エネ主力電源化に向けた電力制度改革は、「60点」

――そうしますと、現時点で、電力制度改革を評価すると、100点満点中、何点をつけますか。

山家:どうでしょう。60点くらいでしょうか。私は日本の再エネ主力化に向けた動きを4つの局面から評価しました(下図)。

需要家のニーズという点では、++です。「RE100」などの取り組みがあって、再生エネルギーへのニーズが飛躍的に上がっています。今年6月に日本経済団体連合会は「チャレンジ・ゼロ」を発表し、温室効果ガスの排出「事実上ゼロ」の早期実現を目指すと宣言しました。続いて、経済同友会が「2030年度の再生可能エネルギーの電源構成比率を40%」と打ち出しました。

先ほど言いましたように、送電線などネットワークの整備も加速度がついてきています。

市場の整備に関していえば、下手したら「容量市場」がのさばって、虎の子の卸電力市場の健全な発展を圧迫するかもしれないという懸念があります。

再エネ支援策については、固定価格買い取り制度の見直しは時期尚早であると思います。

太陽光は突出しているので見直しはわかりますが、風力をはじめ再生可能エネルギーの開発がやりにくくなる状況です。

河野 博子 ジャーナリスト

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こうの ひろこ / Hiroko Kono

早稲田大学政治経済学部卒、アメリカ・コーネル大学で修士号(国際開発論)取得。1979年に読売新聞社に入り、社会部次長、ニューヨーク支局長を経て2005年から編集委員。2018年2月退社。地球環境戦略研究機関シニアフェロー。著書に『アメリカの原理主義』(集英社新書)、『里地里山エネルギー』(中公新書ラクレ)など。2021年4月から大正大学客員教授。

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