ダイソンがEVから撤退せざるをえなかった理由

テスラが築いた「高くて構わない」はもう飽和

すでに起きていた構造的変化について行けなかったと考えられる(撮影:田所 千代美)

イギリスの家電大手、ダイソンはEV(電気自動車)の開発から撤退することを発表した。

従来の内燃機関に比べれば、EVは部品点数が圧倒的に少なく、技術蓄積が必要なくなるとする見方から、「EVの時代になれば、参入障壁が下がり、既存自動車メーカーのアドバンテージが失われ、新興の異業種からの活発な事業参入が見込まれる」という説が巷間をにぎわした。コンペティターが増えることで価格競争が進み、車両価格は数分の1に下がるとする意見も根強かった。

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すでに家電の世界で先行していたように、いわゆる垂直統合型から水平分業型への構造移行が進むとされていた。そしてまさに異業種からの参入の旗手と目されてきたのがダイソンであった。

創業者のジェームズ・ダイソン氏はEV開発プロジェクトで開発中の車両がすばらしいものであったことを強調するが、現実的に事業の採算見通しが立たず、事業の売却にも買い手がつかなかったという。

しかし、その話は矛盾する。すばらしい製品だが採算が合わず、かつ事業の引き受け手もいないという条件は不自然である。

おそらく、ダイソンはEVのマーケット構造変化についていけなかったものと考えられる。順を追って説明しよう。

そもそもEVとは何なのか?

EVの目的は温室効果ガスを削減することにある。これが第一義で圧倒的に大事。社会の使命として可能な限り早く化石燃料の使用をやめなければならないからこそのEVである。

内燃機関との比較上でのEVのメリットはいくつかあるが、上述の化石燃料廃止の手段という存在異議と、それ以外は少し階層が違う。言ってみれば嗜好性的な領域である。

例えばEVならではの運転フィールがある。モーターの特性を生かした瞬間的な加速力。かつてのアメリカ車が自慢のV8ユニットの加速力を広告で「Kicking Asphalt(キッキング・アスファルト)」とうたったように踏んだ瞬間の異次元の加速力は魅力の1つだろう。3つ目は静粛性、内燃機関と比べると圧倒的に静かで洗練されている。

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