DV加害者だった52歳夫を変えた強烈な「自覚」

耐えかねた41歳妻が被害者になり気づかせた

「DVチェック」を通じて、NPO法人女性・人権支援センター「ステップ」(横浜市)の存在を知った。DV・虐待の被害者支援に加えて、全部で52回の加害者向けプログラムを提供しているらしい。九州では、同様のプログラムは見つからない。拓さんが「ステップ」に問い合わせると、オンラインでの参加は認めていない(現在はオンラインも実施)。本来なら週一度・1年間で修了となるが、拓さんは事情を説明し、一度に数回分の受講を認めてもらった。

そして、拓さんは定期的に、宮崎から横浜に通うようになる。

「ステップ」のプログラムでは、参加者がテーマに沿ってディスカッションしたり、パートナーとの近況を報告し合ったりしながら、歪んだジェンダー観を自覚し、被害者の傷つきを学んでいく。参加費は1回3000円。集まるのは各回5~10人だ。

全回を通じて、参加者は「DV加害は3つの要素からなる」ことを学ぶ。

まずは依存心
相手に依存しているのはむしろ加害者側である

次に生育環境
DVや虐待など暴力に近い環境で育った人は、それを再生産する恐れがある

それから、外的コントロールによる刷り込み
圧力をかけることで他人は変えられるという思い込み。暴力的なシーンが頻繁に登場し、暴力を肯定するかのような劇画などを見て育った人たちは、暴力で勝ったほうが正義という価値観が刷り込まれている

【2020年10月5日8時10分追記】初出時、外的コントロールによる刷り込みについて不適切と思われる部分があったので上記のように修正しました。

中川さん(撮影:ニシブマリエ)

人格を変えるのではなく考え方や行動を変える

拓さんは横浜で何に気づかされたのか。

「DV男は変われないと思われがちですが、『ステップ』や『エフエフピー』でやっていることは、根性や気合いではなく心理学です。人格を変えるのではなく、考え方や行動を変える。例えば、選択理論という考え方を学びます。これは、自分の行動は自分の選択であると自覚すること。『相手が私を怒らせる』のではなく、『私が怒りを選択している』のだと知ることです」

加害者は多くの場合、相手が怒らせるようなことをしなければ、自分は加害者にならずに済んだという被害者意識がある。しかし、選択理論を学ぶと、自分の行動の責任は相手ではなく、自分自身にあると知るようになる。

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