取引先に提案が通らない人がわかってない急所 多様に演じ多角的視点から自己と社会を語ろう
自分のやりたい仕事を進めていくためには、社内外でそれを「通す」ことが不可欠となります。とくにビジネスパーソンが仕事の取引先に納得してもらって提案やプレゼン、企画を「通す」には、どのようにするのが有効でしょうか。拙著『通す力 GOサインを得るコツ55』でも解説している中から3つのコツをお伝えします。
「素の自分」って、いったいなんでしょうか。
私は自分の子どもに接するとき、決して「素の自分」ではありません。父親を演じています。講師をしているときは、「講師の自分」を演じています。
アップルの共同設立者の1人であるスティーブ・ジョブズは、プレゼンの天才といわれていました。iPhoneの新製品発表会では、身振り手振りで「アップルが電話を再発明する」といった名言を吐きながら、見るものの心をつかみました。彼は「素の自分」で、こうした会見に挑んでいたでしょうか。そんなはずはないでしょう。彼は、さまざまな役回りを演じていたと私は分析しています。
私はそれを「芸者」「役者」「易者」「学者」「医者」という5つの演者だと解釈しています。
明るい未来を予言する役割も必要
① 芸者
退屈なプレゼンは話を聞いてもらえません。ジョブズは、前述の「アップルが電話を再発明する」と発言したあと、昔の回転式ダイヤルのついたiPodの写真を見せて、会場を笑いに包みました。このように場を盛り上げるには「芸者」を演じていました。
② 役者
プレゼンの場では、「素の自分」ではなく、その製品やサービスの特長を理解させ、興味を持ってもらう必要があります。一方で、素の自分のままだと、恥ずかしさが先立ち、しっかりとしたプレゼンをすることができないものです。だから「役者」として、そのキャラクターになりきっていると、思い切ったプレゼンができるようになります。ジョブズはもちろんこれをやっていたでしょう。
③ 易者
ジョブズは初代iPodを紹介するとき「1000曲をポケットに」と発言しました。それを聞いた聴衆は、何を思うでしょうか。「外出中でも、いつも好きな音楽を聴くことができるんだ」と、明るい未来を想像するようになります。
ジョブズは自信を持って明るい未来を予言した。これは「易者」──つまり、占い師の役割です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら