取引先に提案が通らない人がわかってない急所 多様に演じ多角的視点から自己と社会を語ろう
④ 学者
ジョブズのプレゼンは「シンプル」です。くどくどと語らず、その製品やサービスの魅力を端的に伝えています。漏れがないように、いろいろなことを伝えるプレゼンでは相手に響かないのが一般的です。いちばんの魅力を伝えるには、深い製品知識を身に付けておく必要があります。これは「学者」の役割です。
⑤ 医者
人が製品やサービスを買うときは、何か困り事、不満、不便、不具合を解消するときではないでしょうか。だからこそ人の困りごとを助ける提案、アプローチをする。ジョブズはこの点において「医者」の役回りを果たしていたと私は思います。
5者すべてをつねに演じられる人はなかなかいないでしょう。その必要もないはずですが、こうした観点を持っていると、プレゼンや提案の質や相手の受け止め方に影響を与えるはずです。
プレゼンのとき、その製品やサービスのメリットを1つだけに絞って話す人がいます。しかし、それでは相手に「いい製品(サービス)だ」と伝わりにくいことも少なくありません。
プレゼンする側は、その製品やサービスを熟知していますが、相手は、まったく知らない状態です。それなのに、そのメリットを絞って伝えると、相手はそれ以外の利点に気づきにくくなるからです。
iPhoneは「革命的な3つの新製品」だった?
またもスティーブ・ジョブズを引き合いに出してしまいますが、彼が「初代iPhone」のプレゼンをするとき、「本日、革命的な新製品を3つ発表します」と言って、こう続けました。
「1つ目。ワイド画面、タッチ操作iPod。2つ目。革命的な携帯電和。3つ目。画期的ネット通信機器。
3つです。
タッチ操作iPod、革命的携帯電話、画期的ネット通信機器。
iPod、電話、ネット通信機器。
iPod、電話、おわかりですね。
独立した3つの機器ではなく、1つなのです。名前はiPhone」──。
もし、ジョブズが「革命的携帯電話」という点に特化してプレゼンをしたら、これまでの一歩先を行く携帯電話くらいの印象しか、世間に与えられなかったかもしれません。その点、3つの特徴を挙げたことによって、見ていた側は「初代iPhone」が、自分たちの想像のはるか上をいく製品であることに気づいたのです。
スマートフォンと呼ばれるデバイスが誕生した瞬間でもあったでしょう。
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