ポストコロナの経済と菅内閣が直面する課題 BNPパリバ・エコノミスト河野龍太郎氏に聞く

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ときに誤解も拡散されるオンラインニュースの時代。解説部コラムニスト7人がそれぞれの専門性を武器に事実やデータを掘り下げてわかりやすく解説する、東洋経済のブリーフィングサイト。画像をクリックするとサイトにジャンプします

――先ほどもお話に出た、IT化、デジタル革命で、所得格差がますます進むという問題。これはどうなりますか。所得再分配の機運が高まるのか……。

単に高所得者から低所得者に社会保障制度の拡充を通じて所得移転を行うという話ではないだろう。本質は、知識経済化が進む中、アイデアが生み出す付加価値の帰属について、われわれが考え方を変えることができるかどうか、というところにかかっている。

GAFAの儲けの源泉はわれわれが喜んでせっせと入力している個人情報。これに対価を払え、といって実現できるかどうか。過去の例で言えば、スタンダードオイルとかUSスティールの解体に匹敵する。物的資本の生み出す利益は所有者に帰属するのが明らかだが、無形資産の生み出す付加価値の帰属は社会規範が決めるので、変わる可能性がある。

個人情報は誰のものか。欧州では議論になっているが、ITの巨人はアメリカ企業なので、議論が進んでいない。したがって、アメリカにおける社会の不安定化が最終的に変革につながる可能性がある。

反グローバリゼーションの流れは明確に

――今回の危機ではグーグルの移動データをさまざまな分析で活用している人が多いですが、1私企業がこうしたデータをすべて握っているのも不気味です。

重要な点だ。日本人は国に情報を握られるのが嫌だと言う人が多く、マイナンバーの登録がなかなか普及しないが、私企業に持たれているほうが大きな問題だろう。例えば、今後、スマートシティが実現して、あらゆる建物で発電が再生エネルギーで行われ、町自体が、IoTによって動くといったことが実現したら、そのシステムを誰が管理するのか。グーグルのトロントで計画したスマートシティにも異論が出た。

――民主的な管理の仕組みを議論することになるんでしょうね。

マンションの管理組合みたいな、第三者機関による管理ということになるのだろう。協同組合といった発想が重要になるのかもしれない。

――パンデミック危機をきっかけにグローバリゼーションからナショナリズムへ、という動きが加速するのでしょうか。

1980年代から続いてきたグローバリゼーションは、反グローバリゼーションに流れがはっきりと変わったといえる。金融グローバリゼーションの行きすぎで、ウォール街関係者が途方もない所得を手に入れたという問題だけではない。自由貿易は必要なはずだが、われわれは一国の社会規範や社会慣行の領域に手を入れるほどのグローバリゼーションを推し進めたため、各国で政治的分断や権威主義勢力の台頭が生じた。

パンデミック危機解決のためには世界が協力しないといけないはずだが、グローバリゼーションの恩恵を最も受けた中国の台頭の結果、米中の新冷戦など対立も強まっている。経済を語る際も、つねに安全保障上の話をしなければならなくなるのだろう。ダニ・ロドリック教授が主張しているような、「グローバリゼーションより国家主権や民主主義が重要」という流れになるのではないか。

大崎 明子 東洋経済 編集委員

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おおさき あきこ / Akiko Osaki

早稲田大学政治経済学部卒。1985年東洋経済新報社入社。機械、精密機器業界などを担当後、関西支社でバブルのピークと崩壊に遇い不動産市場を取材。その後、『週刊東洋経済』編集部、『オール投資』編集部、証券・保険・銀行業界の担当を経て『金融ビジネス』編集長。一橋大学大学院国際企業戦略研究科(経営法務)修士。現在は、金融市場全般と地方銀行をウォッチする一方、マクロ経済を担当。

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