ポストコロナの経済と菅内閣が直面する課題

BNPパリバ・エコノミスト河野龍太郎氏に聞く

――菅政権はどのような経済政策を採ると思われますか。

当面はパンデミック対応で財政を膨張させ、金融政策による低金利でこれを支えることに変わりはない。しかし、菅さんはリフレ派とは距離を置いているし、「自助、共助、公助」とスローガンに掲げている。この言葉は、オールドケインジアンとは違う。時間が経つと政権のカラーが変わる可能性はあるのではないか。

――もっと構造改革的な政策になるのでしょうか。

差別化が図られるのはミクロの政策だと思う。総務相をやっていたので、携帯料金の引き下げはよく言われるが、官房長官という仕事柄、各省庁をまたぐ案件を解決するのは他の人よりも得意。安倍政権でのインバウンド、農産物輸出、外国人労働の活用なども菅さんの政策だ。安倍政権は成長戦略と言いつつ、痛みを伴う競争政策などから距離を置いていた。菅氏は小泉純一郎政権の時代、総務副大臣として竹中平蔵総務相の薫陶を受けていた。小泉流の新自由主義的な構造改革路線と親和性が高いように思われる。

今回、3つをすでに上げている。デジタル庁、厚生労働省の再編、地域金融機関の再編と。デジタル庁は当然やるべき案件だ。日本ではあらゆる申請がデジタルでできないことが問題になっていたが、とくに、今回のコロナ危機で明らかになった。オンライン教育、オンライン診療などすべて遅れている。

パンデミック危機で困窮する人に手厚いサポートを行うという政策が本来は必要だが、政府が所得のデジタルデータを持っていないため、結局、11年前と同様に、ゆとりのある人を含め、国民すべてに一律に現金給付することになった。10年に1度は経済危機が訪れるのだから、適切で迅速な政策を遂行するには、デジタルデータで国民の所得や資産を捕捉する必要がある。

菅さんは行政改革が国民の利益になるという発想

厚生労働省はパンデミック危機への備えが不十分で初期対応で検査態勢など立ち上がりが悪かったと言われる。省庁再編のときに担当分野が広くなりすぎ、政治がうまくコントロールできていないと解釈されているのかもしれない。医療・介護と労働・年金を分けるという議論が以前からあった。

政治的な文脈で言うならアメリカのレーガン政権のころから、行政運営がうまくいかないのは非効率な役所のせいであり、行政改革を行うことで国民の利益につながる、という発想がある。小泉政権下の道路公団や郵政の改革と同じで、行政改革を進めることで、求心力を高めることもできる。

金融機関の再編も人口が減少し、フィンテックが広がる中で、取り組まなければならない問題だ。マイナス金利政策もあって金融機関の体力はすでに落ちている。パンデミックが長引けば、不良債権問題を抱えるところも出てくる。ただ、弱い金融機関同士がくっついても効果はないし、新たな収益モデルを見出すことも容易ではない。当面は、強い金融機関を作るといったプロアクティブな話ではなく、弱った金融機関を合併などで混乱なく退出させるといったリアクティブな政策になるのかもしれない。

安倍首相は毎年、スローガンのように政策を打ち出したが、菅政権では限られた案件をじっくりと解決するといったスタイルになる可能性がある。

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