ポストコロナの経済と菅内閣が直面する課題

BNPパリバ・エコノミスト河野龍太郎氏に聞く

――日本銀行の金融政策の見直しはあるでしょうか。

2013年1月に政府と日銀がアコードを結んでから、2%の物価目標を掲げて金融緩和を続けてきたけれど、無理だった。パンデミックがなくても、2%到達は見通せなかったはずなので、このことについての総括は必要だ。現状では利上げなどはとうていできないけれども、2%インフレ目標の位置付けの見直しや、ウィズコロナ、アフターコロナにおける財政金融政策の整理など、いずれアコードの見直しを行わなければならない。

――財政の健全化はかなりハードルが高いです。

今後も財政健全化どころか、パンデミック危機が収束するまでは、追加財政を繰り返さざるをえないだろう。まず、パンデミック危機にかかった費用についてどうするかが問題だ。東日本大震災のときと同じように、区分会計を行って、負担を比較的ゆとりのある企業や家計にお願いする必要がある。

パンデミック危機以前からのプライマリーバランス(基礎的財政収支)の赤字は高齢化に伴って膨張し、財源を手当てできていない。これは消費増税で対応するしかない。しかし、安倍政権下の2回の増税のあと、個人消費が大きく落ち込んだ。政治家はもうこりごりだと思っているだろう。潜在成長率が2010年代には0.6%まで低迷しているのだから、3ポイントや2ポイントも一度に上げると消費がダメージを受けるのは当然だ。1ポイントの増税でも1年間の実質所得の増加はすべて吹っ飛んでしまう。

「2年に1度0.5%の消費税率引き上げ」を提案

したがって、実質所得の増加を可能にするには2年に1度の0.5%の増税を行ってはどうか。1回でまとまった増税をすると、そのたびに景気の落ち込みをカバーするべく大規模な財政支出を行ったり、税収増の一部を新たな歳出に振り向けるので、いっこうに帳尻が合わない。0.5%の増税なら、そうしたことをしなくてもよい。キャッシュレス化が進んでいるので、企業の対応も可能だと思う。

10%ポイントを引き上げるに40年かかるのでは金融市場が納得しないと思われるかもしれないが、景気への悪影響が小さく途中で挫折しないということで、好意的に受け止める可能性が高いのではないか。不況でも挫折しない財政健全化プランが整っていれば、不況期に追加財政を行うことも容易になる。

また、社会保障給付の増加ペースは速いので、年金の支給開始年齢が65歳のままだと危うい。男性の平均寿命が81歳、女性が87歳になっており、年金は長生きリスクへの対応であることを考えると、支給開始年齢の引き上げを考えるべきだ。保険だけでなく、国費の半分がつぎ込まれているので、所得の多い人の給付を下げることも考えるべき。世代にかかわらず困窮者を救済するのが狙いなのであれば、ゆとりのある高齢者には負担をお願いしないといけない。

医療保険においては、後期高齢者の負担を1割から2割に引き上げることは評価できるが、疾病の内容で変えるべきだと思う。重篤な病であれば保険料を引き下げ、生活の質を上げるためのものであれば自己負担を引き上げるべきではないか。

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