ポストコロナの経済と菅内閣が直面する課題

BNPパリバ・エコノミスト河野龍太郎氏に聞く

――ポストコロナの経済面での変化についてお尋ねします。まず、ますますデジタル化が加速しそうですが、中国が先行して中央銀行デジタル通貨の研究が進みそうです。そうなった場合、ドルの位置づけはどうなるでしょうか。

むしろ、新型コロナの流行の当初に世界中でドルの需要が拡大した。そこで、各国の中央銀行が、主要国のみならず新興国もドルの手当てができるように協力した。先進国の金融緩和や、IMF・世界銀行の協力、日本が主導するチェンマイイニシアティブなどで、新興国の資金繰りをサポートし、新興国からの資金流出の危機を回避した。ドルの重要性は基本的には変わっていない。一般論で言うと中銀デジタル通貨の導入を進めることになったら、ドルの利用がもっと広がる可能性もある。

米中新冷戦で、情報通信や医療関係、食料などの安全保障分野を中心に部分デカップリングが進む中、国際金融は基本的にドルで動いているので、中国はアメリカの優位性を覆そうと、人民元の国際金融面での利用を広げていこうとするだろう。中国国内のみならず、権威主義的な国家には浸透しやすい。アメリカと政治的に対立するところは従来、ドルで決済していることによりアメリカから金融的な制裁をかけられやすいという問題を抱えているため、ドルに代わる国際的な通貨を作ればメリットがある。

ただし、中国も資本逃避の問題を抱えている。現在の社会システムが持続可能ではないと考えて、富裕層が資金を国外に流出させており、人民元の自由化を進めて、広く国際的に使ってもらおうとすると、その動きが止められなくなる。米中とも微妙で、難しいところがある。

アメリカ社会の不安定化も深刻だ

――米中対立はどちらにも弱みがあり、綱引きが続くということでしょうか。

アメリカは今のところ民主党政権になる可能性が高いが、中道派のバイデンやハリスで、現在の社会の分断を止められるのか疑問だ。ここ30年、アメリカではIT分野を中心にイノベーションは起きてきたけれども、アイデアの出し手ばかりに所得増加が集中する構造だった。公的医療保険すら整わない状態なのに、選挙資金法による規制は改正されて政治を金で買える状況になっている。

パンデミックのリスクも平等ではなく、ホワイトカラーはテレワークなどで感染リスクを避けられるが、所得の低い人は感染リスクの高い仕事につかざるをえず、有色人種の被害が大きい。アメリカは自由の国をうたって、中国の新疆・ウイグル自治区などの問題を指摘するが、自国が誇れる状況なのか。

現状程度の支持率の差だと大統領選挙は接戦になり、トランプ大統領が郵便投票は不正だと主張しホワイトハウスに居座り続けたら、治安維持部隊と民主党支持者の間で暴力沙汰が広がり、内乱のようなことも起きかねない。アメリカも大きな問題を抱えている。

パンデミック危機は何かを変えるというよりも、今ある問題を加速させると見ている。「日本化」問題も、米中対立も、デジタル化の問題も、社会の分断も。

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