親子で気軽に楽しめる「オンライン育児」の実力 最初から中国市場を狙うスタートアップ企業も

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保育園と銘打ってはいるが、対面ではなく、法律上の保育所ではない。それでも、先生がオンライン上で子ども1人1人に目配りし、声をかけながら遊んでいく様子は、実際の保育園に近い雰囲気が感じられる。

タオルを用いたダンスや人形を使った浦島太郎の物語の読み聞かせなど、1時間のイベントは盛りだくさんの内容。この日のイベントでは、23組の親子が参加した。5歳の子どもを持つ東京都在住の親は「姿が直接見えないオンラインで、かつ人数が多めでも、個人への声かけがあり、子どもが楽しみながら安心して参加できた」と喜ぶ。

千は登録カメラマンが保育園や幼稚園の子どもの写真を撮影し、インターネットで販売する事業が主力。新型コロナの感染拡大による緊急事態宣言下で、ずっと家で過ごすことによるストレスを抱える親子を支援しようと、4月末に「オンライン保育園」を立ち上げた。

700組を超える親子が参加した

先生役は女性カメラマンが担う。必ずしも保育士の資格を持っているわけではないが、「子どもを楽しませたり、笑顔にさせたりするのが得意」(同社)という。保育園などが再開した6月は、一時参加者が減少したが「子どもが楽しみにしているので、平日夕方や土日に開催してほしい」との声があり、開催日時を変更。すると参加率が上昇し、8月までに参加した親子は700組を超える。

親子の参加費は無料で、イベントの運営費はクラウドファンディングや企業からの協賛金で賄う。協賛企業は玩具やケーキ、英語教材などの自社商品を提供し、家族層に対してアピールできる。

もっとも、「オンライン育児」が普及するには課題もある。スマホやパソコンの画面を長時間見ることが「子どもの発育に良くない」との見方もあるからだ。

ワンドットの鳥巣CEOは「オンライン教育が進んでいる中国でも未就学児向けサービスは伸びていない」と指摘する。また育児サービスに関心を持つユーザーの多くは女性で、男性による育児参加が遅れている。

オンライン育児に関わる企業は子どもに優しいユーザーインターフェースや、父親による育児参加を促すサービスの開発も進める必要がありそうだ。

馬渕 次郎 スタートアップライター

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まぶち じろう / Jiro Mabuchi

一橋大学を卒業後、上場メーカーで経理業務を経験。大手メディア企業に入社し、幅広い産業や資本市場の取材、媒体の編集業務に携わる。現在は公認会計士として企業の財務諸表監査を軸に、スタートアップ関連の情報発信や執筆活動にも従事している。

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