子育て世代の入居希望が絶えない賃貸の正体 希少性の追求で異彩を放つ旭化成ホームズ
空き家・空室の増加や、事業者や金融機関による不正問題の発生から、賃貸住宅供給をめぐる世間の見方は厳しさを増している。「新たな物件は必要ないのではないか」などと考えている方もいるだろう。では、本当に新規物件の供給は減っていくのだろうか。本稿では、超高齢化や子育て環境の改善など、人々や社会が抱える問題に対処する物件の事例を紹介し、今後の賃貸住宅供給のあり方を探ってみた。
仲良く活発に遊ぶ子どもたちと、その様子を見守りながら世間話を楽しむママさんたち。かつての長屋暮らしのような光景が広がるのは、東京・杉並区にある賃貸住宅「母力(ぼりき)おぎくぼ」(2015年11月竣工)だ。「ヘーベルハウス」でおなじみの旭化成ホームズグループが企画から施工、入居者募集、管理、運営までを行っている。
建物は東西2棟、14戸で構成される2階建てで、住戸はすべて2LDK(広さは61.43㎡~75.87㎡)。対面型システムキッチンや追い炊き付きのお風呂、録画機能付きインターホンなど、分譲マンションも顔負けの充実した設備が設置されている。
子育ての悩みを相談できる
敷地内には建物や駐車・駐輪スペースのほか、子どもたちの集いの場となる砂場もある「母力の庭」と呼ばれる共用の中庭も設けられている。建物は玄関とリビングがすべて中庭に面し、入居者が必ず中庭を通る動線で、入居者同士の自然な交流を促し、子育てしやすい環境が敷地全体で整備されている。
入居者の子どもを持つ女性2人に話を伺った。子どもが生まれる前に入居したAさんは、「出産・子育ては初めての経験だったので、同じような境遇のご家族、ママさんが住んでいるこの物件は、相談などをしやすく安心できた」と話す。
すでに子どもがいて、夫の転勤を機に入居したBさんは、「入居者の方々などが子育てを助けてくれるので安心。また、周りの子どもたちの成長過程も観察できるため、自分の子どもの成長について変な心配をしなくてすんだ」と語っている。
特に新米ママさんにとっては、出産や子育ては孤独になりがちで負担が大きい。すぐ近くに相談できる相手がいるのは心強いことだろう。同じような境遇の人が家族で支え合って子育てを楽しめる環境があることが、何よりこの賃貸物件のユニークな点だ。
ユニークさは入居募集のあり方にもみられる。専用ホームページ開設のほか、近隣の保育園などへのパンフレット配布などを行い、入居説明会も開催している。一般的な賃貸住宅が不動産会社間のオープンなネットワークの中で、「駅から○分、広さ○㎡、家賃○万円」という形で入居者を募集するスタイルとは大きく異なる。
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