密かに増える「内部崩壊マンション」の恐怖 あなたのお隣、大丈夫ですか?
東京ミッドタウンから歩いて数分。築40年の現在も億を超える金額で取引されるマンションで昨夏、異臭騒ぎが起こった。100㎡超の住戸に1人暮らしをする70代女性の住戸がゴミ屋敷化し、エレベーターを降りた途端に臭いに気づくほどの状況になっていたのである。
害虫も発生しており、同じフロアの住民からの訴えで管理組合の理事長以下何人かが繰り返し接触し、ゴミの廃棄を呼びかけたが、彼女はそれを拒否。当初は話し合いでの解決を目指していた管理組合も現在は弁護士に依頼し、法的な措置を検討しているという。
外観は管理が行き届いているように見えても
だが、行動できる管理組合があるだけ、同物件はましだ。「表には出てきてはいないものの、すでに総会が成立しない、管理組合が機能していないマンションがあるのでは」とマンション等の維持管理コンサルを主業務とするKAI設計の菅純一郎氏は懸念する。
菅氏が懸念を抱くようになったきっかけは、3年前に行った江戸川区にある築45年、全309戸のマンションの大規模修繕。外観だけなら手入れが行き届いて見える同物件だが、入居者の平均年齢は71歳。総会案内を認識できない人、杖、車いすがなければ総会に参加できない人も多かった。幸い、そのときには決議に必要な過半数ぎりぎりの参加(委任状含む)で可決できたが、次に何かを決議するとしたら総会自体が成立しないだろうと菅氏は話す。
高齢化の進展がマンションを内部から蝕み始めているわけだが、物件によってはそれを加速させるマイナス要因を抱えていることもある。その要因は大きく2つ。ひとつはコミュニケーション不足による居住者の孤立だ。
同マンションでは、共用の排水管が各住戸のトイレの奥に敷設されていたため、専有部に立ち入る必要があった。そこで全戸を訪問した菅氏が出会ったのは70代の孤独死予備軍ともいえる引きこもりの男性数人。住宅ローンは完済、年金もあって経済的には困っていないものの、妻に先立たれ、周囲との付き合いはまったくない。
どの部屋もコンビニの弁当殻やビールの空き缶、焼酎の空きボトルが積まれたゴミ屋敷状態で靴を脱ぐのもためらわれるほど。これまでも年に1人くらいは孤独死があったというが、今後は加速する可能性がある。
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