密かに増える「内部崩壊マンション」の恐怖 あなたのお隣、大丈夫ですか?
そこで管理組合が全体の資産価値維持のためとして工事をするのだが、管理組合には専有部のみの工事はできない。結果、共用部のバルブを15万円で交換するのにあわせて専有部の給排水を1億円で工事するといったいびつな形を取ることになってしまう。それも、できればまだマシだ。築30年前後といえば、2度目の大規模修繕を終えた頃。修繕が終わった途端に漏水が始まっても、修繕費用が底をついている、ということもある。
1980年に建てられた大田区の全100世帯のあるマンションでは、毎月2世帯が新たに漏水するような状況だが、工事費用がない。そこで仕方なく組合が入っている保険を援用し、補填していたが、あまりに頻繁だったため、適正な利用でないことが発覚。保険金が出なくなってしまったという。
リフォームはしても給排水は変えていない
築20年以上の場合、給排水管がコンクリートスラブ内に敷設されていることが多く、床を一度壊して工事をする。完了後は床を復旧する必要があり、その分費用が嵩む。「100戸のマンションで共用部のみなら戸あたり40万円の工事が、専有部が入るとプラス30万~40万円かかる。内装の仕上げによっては戸あたり100万円に跳ね上がることもあり、当初予算の倍になることも少なくありません」と菅氏は話す。
そのうえ、修繕前に室内をリフォームしていた住民がいると反対も出る。大金をかけたリフォームが無駄になるからだ。2017年11月の大規模修繕時に住戸内の給排水管交換を行った世田谷区のマンションでは122戸のうち、6戸が管理組合の説得に応じず、工事ができなかった。今後、漏水が起きたらどうするか。理事たちは今から頭が痛いという。
菅氏は築35年、1000世帯を越すマンションで大規模修繕を前に住民アンケートを実施したことがある。リフォームの有無に加え、給排水管交換について尋ねたところ、交換したという世帯はゼロ。リフォーム時に給排水管の交換をするように義務付けておけば多少なりとも延命できるものの、リフォーム業者の多くは、給排水管は面倒といじりたがらない。所有者も交換の重要性を知らないから頼まない。それが続いてある日、どかん。時限爆弾のようである。
築40年以上の建物では排水管は下階の天井に配されていることがあるため、上階の所有者が修繕するためには他人の部屋を工事することになる。「最高裁の判例ではこのケースに限っては専用の排水管を共用部とし、管理組合が負担とすべしとしましたが、その判決を知らないことで、現場ではいまだに混乱するケースがある」と、不動産管理に詳しいmachimoriの三好明氏は話す。
早急に管理規約、あるいは運用を変える必要があるが、そうこうしているうちにもあちこちのマンションが危険な状態に陥りつつある。大丈夫なのか、日本のマンション、である。
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