密かに増える「内部崩壊マンション」の恐怖 あなたのお隣、大丈夫ですか?

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30年余間、まったく手の入っていないマンションがどうなったか、想像できるだろうか。エレベーターは止まり、一部の外壁ではコンクリート内部の鉄筋がむき出しで、各部屋のドアは錆びだらけ。受水槽や汚水桝は悪臭を放っていたという。

中野区にある築50年超のマンション。錆びつきが目立つ(筆者撮影)

さすがにおかしいと疑問を抱いた一部の区分所有者がマンション管理士の木村幹雄氏に相談。その時点では管理組合の口座残高は10万円を切る状態で、しばらくは共用部廊下の電気代にも事欠くほど。その後、木村氏が区分所有法に基づいて管理者に選任され、この2年間、マンション再生に奔走した。300万円以上の未納管理費を回収したほか、汚水桝の修繕や鉄部塗装などが行われたことで、状態は改善。賃貸に出された部屋には数人が入居した。

エレベーターはいまだに止まったまま

だが、それでも全50戸のうち、20戸以上は空室。エレベーターはいまだ止まったままである。中にはゴミ屋敷のままで放置されている住戸もあり、それが何戸あるかは木村氏にも正確に把握できていない。管理組合側の提訴に対し、Aも管理者報酬、コンピュータ使用料の支払いを求めて訴訟を提起しており、解決、再生までの道はまだまだ遠い。

中野の築50年超のマンション。明らかに老朽化が進んでいる(筆者撮影)

「Aが悪いのはもちろんですが、管理に無関心のまま、Aにすべてを丸投げしてきた区分所有者にも責任があります」と木村氏。「私が管理者になってからも、相変わらず管理人と区別がつかないのか、『自分たちが外部から管理者を雇っているんだから、区分所有者である自分たちの言うとおりにしろ』と考える人もいるほどです」。

管理費などの収納・支払いに関して木村氏が一部管理委託を打診した管理会社5社のうち、4社から断られており、委託できた1社も木村氏が手を引くなら辞めるという。そんな状態に陥ってもまともに管理と向き合おうとしない区分所有者。無関心の怖さである。

さらにもう1つ、マンションを内部から崩壊させるものがある。それが建物の老朽化で、特に問題は給排水だ。定期的に大規模修繕を行っていても築30年前後になると専有部からの漏水が始まり、次第に拡大し、収拾がつかなくなることがあるのだ。

なぜか。簡単である。大規模修繕は外壁や防水、塗装など建物を中心に行われ、その対象は共用部分である。専有部の漏水は大規模修繕の対象外だ。だが、放置しておくと階下に影響が出て人間関係がこじれる。外装はきれいでも漏水する物件では資産価値も下がってしまう。

次ページしかし、給排水の工事は簡単にはできない
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