「あえて怠け者を許す」働きアリの不思議な生態 人間が軽視する「働かないアリ」の生存理由

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ダーウィン自身はこの理論を、自らの探検旅行での観察データから思いついたとされます。彼は1800年代にビーグル号という軍艦に乗ってイギリスから世界中の海洋を5年かけて旅して、その間、大陸や島の多種の生物を観察し、あるいは化石を発掘し、集めてきました。そんな調査の結果から、彼は、なぜこの地球にはさまざまな種が存在し、種ごとに決まった地域に住んでいるのか、そして、なぜ化石でしか見られない生物種たちは滅んでしまったのか、といった生物の時間的・空間的な多様性を作り出しているメカニズムに関心を抱き、その原理として「生物はつねに変化を続ける」という理論を打ち出したのでした。

難しく感じる進化論の理論自体は、実にシンプルで、当たり前のことをいっているだけなのです。

進化論以前は、「生物種は神が創られた」とするキリスト教の創造論が主流とされていましたから、ダーウィンのこの新理論は当時の生物学の概念を根底から揺るがすものであり、生物学のその後の進歩を支える革命的なものでした。

今も昔も誤解されやすい進化論

一方で、ダーウィンの進化論は誤った解釈をされやすい理論でもありました。

ダーウィンの進化論では、さまざまな形質を持つ個体間で生存競争が繰り広げられ、生息環境において相対的に有利な性質を持つ個体がより多く生き残り、より多くの子孫を残すことができるとされます。

つまり自然環境が適応力の強い生物だけをすくい取り、弱い生物を振り落とすふるいの役割を果たしており、この自然環境による生物の選別を「自然選択」といいます。

この自然選択はつねに動的であり、環境が変われば「ふるい」の形も変わり、すくわれる形質も変わってきます。生物の持つ形質の有利・不利はいってみれば時代とともに変遷し、逆転も起こりえます。つまり生物の形や性質には完成形というものはない、という点を見落としてしまう人が多いのです。

こうした見落としをしてしまう人は、自然界は弱肉強食・適者生存で成り立っており、弱い個体や、役に立たない形質は、すべて淘汰され、「洗練された」生物だけが生き残ると進化論を解釈してしまうことがあります。

そしてこうした解釈をする人たちにとって自然界や、あるいは人間社会において、一見無駄と思える形質を持つ個体や、ほかよりも弱そうな個体、あるいは「普通とは違う」と判断される人物は「不完全」「不適格」「できそこない」といった無用ともいえる存在に見えることも多々あるようです。

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五箇 公一 生物学者

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ごか こういち / Kouichi Goka

1990年、京都大学大学院修士課程修了。同年宇部興産株式会社入社。1996年、博士号取得。同年12月から国立環境研究所に転じ、現在は生態リスク評価・対策研究室室長。専門は保全生態学、農薬科学、ダニ学。国や自治体の政策にかかわる多数の委員会および大学の非常勤講師を務めるとともに、テレビや新聞などマスコミを通じて環境科学の普及に力を入れている。

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