日経平均がここからスローにしか上がらない訳 「ひとりきりではダンスはうまく踊れない」!?
筆者は修行中に先輩から、「2番底というのは、1番底より後につける、1番底より浅い底のことを言う」と教わった。だが「2番底が来る」と騒ぐ人々のなかには、1番底よりもっと深い底を意味して騒いでいた人も少なくなかったらしい。
それはともかく、日経平均株価が3月19日にザラ場最安値で1万6358円の1番底を形成してからそれほど日が経たないうちは、「2番底ブルース」は「カラオケ再生件数」の上位に入っていたかもしれない。
だが、今は余り歌われなくなったようだ。コロナ禍がまだ収束していないのに、「2番底ブルース」の流行が終わったように感じられるのは、先に述べたような経済指標の持ち直しが生じているからかもしれない。また、日米欧など主要国で、財政・金融面からの経済対策が次々と打ち出されたことも、経済の下支えを経由して、株価の底抜けを防いでいるのだろう。
「リベンジ消費」や「一時資金給付」では息切れも
その一方で、株価が急上昇していくような状況でもなさそうだ。「景気回復マーチ」は、実は息切れしやすい。
1つは、消費の下支えに「リベンジ消費」の面がある。つまり、主要国で、日本などでは行動の「自粛」が呼びかけられ、多くの国ではロックダウン(都市封鎖)という形で、外出などが強制的に抑えられた。個々人の間で、その間のうっぷんが溜まっており、レストランや行楽施設などが再開されると、「おいしいものを食べたい」「遊びたい」という「リベンジロック」が一気に演じられたという色合いがあろう。そうしたリベンジが一巡すれば、消費の戻りの勢いが鈍化する恐れがある。
もう1つは、諸政策のうち、個人向けの補助金供与やアメリカでの失業保険の上乗せなどで、家計に一時的に資金が給付されており、それが耐久消費財などの購入に振り向けられているという要因も指摘できる。
実際、アメリカでは、本稿執筆時ではまだ議会内で共和・民主両党の交渉が決着していないが、ドナルド・トランプ大統領は「失業保険の上乗せは延長するが額を削減する」という姿勢を打ち出している。
このため、所得の下支え効果が消えるわけではないものの、今後は限定的なものになるだろう。また、耐久消費財の購入自体も、たとえば2台、3台と、同じ家電製品を買うわけでもなかろう。この点でも、今後の主要国の景気回復の速度は衰えるものと懸念されるし、月次統計では、これまでのような毎月連続した全面的な経済指標の回復が、時折は小反落するデータを多く交える様相になるかもしれない。
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