半沢直樹「続編も快進撃」の裏に潜む1つの不安 「倍返し」は痛快変わらずだが時代とのズレも

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すると、ショーになりすぎて、人間ドラマが損なわれているのではないかという疑問の声もちらほら。相手を叩きのめすことばかりが主になり、言葉が暴力的でキツイなどという意見から、いやもはや笑ってしまうという意見まで。7年前は、銀行業界のリアリティーも含めて働く日本人を活写していた「半沢直樹」もやや時代からズレているのではないか。キャラクターものとして若者にも楽しめるエンタメになったとき、シニア層の支持を失うかもしれない。少し心配になったところ、ひとつの対策が――。

「恩返し」である。

第1話で大和田は、半沢によってそれまで築いたポジションから突き落とされたところ助けてもらった頭取に「施されたら施し返す。恩返しです」と尽くすことを誓う。この「倍返し」と響きが似た「恩返し」が視聴者に受け、新たな人気ワードに。半沢までもが「大事なのは恩返しだ」と言い出すほどだった(3話)。

令和の「半沢直樹」は「倍返し」のみならず、「恩返し」。これは大きな変化である。ひどい目に遭って倍返すのではなく、優しくされたら感謝を返す。なにかとハラスメントになってしまう現代の最適な防衛策といえるだろう。

そして、半沢は、「ロスジェネ」編のラスト(4話)で、ロスジェネの部下たちに、上の世代によって活躍の機会を逸した「君たちの倍返しに期待している」と「倍返し」もやっぱり忘れない。この「倍返し」はドロドロした復讐の呪文ではなく、奮起を促す爽やかなものに響いた。

帝国航空の再建をめぐる悲喜こもごも

第5話からは『銀翼のイカロス』編がはじまる。半沢が東京セントラル証券から東京中央銀行に復帰、破綻寸前の帝国航空の再建を任される。おりしも内閣改造計画のサプライズ人事により国土交通大臣に選ばれた白井亜希子議員(江口のりこ)が、帝国航空を救うため、銀行に7割の債権放棄を提案。そうなったら東京中央銀行は500億円もの債権を手放すことになる。なんとしてでも阻止するため、帝国航空を立て直し700億円の債権を回収しなければならない。どうする半沢⁉ 

「ロスジェネ」編を盛り上げた市川猿之助や古田新太、池田成志など怪優たちが退場したあと、「イカロス」編では幹事長に柄本明、総理に大鷹明良、帝国航空幹部に木場勝己、石黒賢、山西惇、弁護士に筒井道隆、議員秘書に児嶋一哉とまたまた怪優たちがそろう。

大鷹明良はアングラ演劇、柄本明はその下の世代、江口のりこは柄本の弟子筋と演劇界の曲者たちは「ロスジェネ」編の歌舞伎俳優たちとはまた違う演技になるだろう。歌舞伎俳優が白黒はっきりさせる芝居だとすれば、柄本や大鷹、江口らはグレーあるいは混沌とでも言おうか。「ロスジェネ」編でショー化され過ぎた倍返し合戦が今一度人間ドラマに戻るのか。前作のように40%超えはなるか。刮目したい。

木俣 冬 コラムニスト

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きまた ふゆ / Fuyu Kimata

東京都生まれ。ドラマ、映画、演劇などエンタメ作品に関するルポルタージュ、インタビュー、レビューなどを執筆。ノベライズも手がける。

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