イェール大卒、元商社マン落語家のキャリア論 【キャリア相談 特別編】第1回

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親に猛反対されるメリット

塩野:なるほど。素朴な疑問ですが、なぜ16歳でそこまで完成度の高い人が出来上がるのでしょうね。

立川志の春(たてかわ・しのはる)
落語家。立川志の輔の3番弟子。1976年大阪府生まれ。イェール大学卒業後、三井物産勤務を経て、2002年10月入門。2011年1月「志の春」のまま二つ目昇進。2013年1月より半年毎にシンガポールで単独公演を実施。大学、企業にて英語落語を交えた講演多数。JAZZ、演劇、日本酒、和菓子、ジャンルの垣根を越えたコラボ企画に積極的に取組中。

志の春:たぶん小さい頃から、この子はできるとわかった時点で、親も学校も遠慮なくそれを伸ばしていくからでしょう。日本だと周りが止める感じがあるじゃないですか。できすぎるからいじめてやろうとか、「普通であれ」みたいなプレッシャーがあるけれど、それがないのでしょうね。

塩野:確かに「普通であれ」プレッシャーはありますね。それじゃ、そういう環境で、どうやって存在感を示そうとしたのですか。

志の春:それはイェールにいる間中、僕の課題でした。僕が300年勉強しても知識の量では彼らに追いつけない。でも僕の日本人独特の視点が面白がられることもあり、それですごく日本を意識するようになりました。

塩野:ああ、なるほど。そういうことは海外に出るとよくありますね。

志の春:なにしろアメリカ人の友達に「お前な、クロサワの映画っていいんだぜ」と言われて、初めて字幕つきの『七人の侍』を見ましたから。

塩野:最近でこそハーバード、イェール、アマーストなど、海外の大学に親御さんが子どもを行かせるような風潮が出てきましたが、志の春さんは、完全に第1世代ですよね。

志の春:僕のときは親は猛反対でした。就職に不利だと。

塩野:わかります。今では隔世の感がありますが、私も同じように小学校、中学校とニューヨークにいて、当時は勉強でもビジネスでも日本が最高だから、とにかく日本語を忘れないように、日本の勉強についていけるようにするのが優先でしたから。その猛反対をどうやって説得されたのですか。

志の春:後日、師匠志の輔に入門したときもそうだったのですが、反対されると燃えるんですね。親に反対されるって、たぶんいいことだと思うんですよ。

塩野:それはもう、ありとあらゆる就活学生に言ってほしいですね。私が思うに、今、就職活動におけるいちばんの問題は親。本人が「このベンチャーに行きたい」と言っても、親が「何を言ってるの、あなた。三井物産にしなさい」と言ったら、「わかりました」となってしまうのです。

志の春:だって親の常識は25年前くらい前の常識じゃないですか。もう時代も違うし、自分が直感で「これだ!」と思った時点で、それが自分にとっては正しいと思いますよ。

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