人口減少の日本には「所得倍増計画」が不可欠だ 単発の政策ではなく「パッケージ」で対応せよ
このように日本および他国の状況を見渡すと、とるべき経済政策が見えてきます。
政府は、起業を応援するべきです。政府は、企業の成長を応援するべきです。政府は、最先端技術などへの投資を応援するべきです。政府は、企業が退場する場合、その悪影響を緩和するべきです。
「規模が小さい」ことを支援の根拠にしてはならない
一方、政府がやってはいけないのは、成長しない企業を優遇・支援することです。成長しない企業を守っている余裕は、これからの日本にはありません。
企業の規模で支援・優遇する対象を決めるのもいけません。European Councilがまとめた「The Use of SME Tax Incentives in the European Union」という素晴らしい論文があります。
この論文では、ドイツやデンマークのように、企業の規模で支援対象を決めず、中小企業への税優遇が少ない国ほど、生産性が向上していると分析しています。
特に、アウトプット税優遇は危険だとあります。アウトプット税優遇とは、企業活動の結果生み出される利益に対する税優遇です。
日本でも、「中小企業は大企業に比べて実効税率が高いから、低くするべきだ」と主張する人がいます。しかし、そもそも日本の中小企業の大半は慢性的な赤字企業で、法人税を払っていません。
その点に目をつぶっても、European Councilは、その議論は本質的な議論ではないから無視するべきと言い切っています。大企業と同じような実効税率になっていない理由は規模が小さいからで、同じ実効税率を実現したいなら大企業になればいい、としています。
減価償却はインプット税優遇で、これに関してはビジネスを改善するので望ましいとありますが、日本のように接待費の優遇や、法人税率を下げることは危険であるとされています。
ただ単に規模が小さいからという理由で優遇すると、企業は成長しなくなります。また、その優遇を狙って、慢性的な低成長・低賃金企業が蔓延します。
「The Use of SME Tax Incentives in the European Union」によると、日本ほどではありませんが、EUの中小企業政策も、実質的に小規模事業者支援策になっているとあります。中堅企業は優遇策の3分の1しか使えないそうです。
先進国では、小規模事業者の過半数はライフスタイル企業であるという認識が高まっています。ライフスタイル企業とは、人に命令されて働くことを嫌い、経営者がやりたい放題に会社を運営している企業を指します。これらの企業の特徴として、税の優遇や補助金目当ての経営者が非常に多いため、決算が赤字の企業が多いことが指摘されています。
このようなライフスタイル企業が成長する例はまれで、小規模事業者は全体の5%前後しか成長しないと分析されています。このような企業が増えてしまうのは、危険だとされています。
日本でも同様の傾向が見られます。小規模事業者の大半は補助金や節税を目当てにつくられ、生産性向上や日本の技術を活用することなどはまったく考えていません。
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