人口減少の日本には「所得倍増計画」が不可欠だ 単発の政策ではなく「パッケージ」で対応せよ

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人口減少の話をすると、「いまは高齢者が元気なんだから、定年を延長して働き続けてもらえばいい」と言われることがあります。しかし残念ながら、日本の人口減少はそういった小手先の対応でなんとかなるほど甘いものではありません。

2019年の就業者数は6724万人でした。そのうち、高齢者は862万人を占めています。

日本の生産年齢人口は、2060年には4420万人まで減ると予想されています。今の就業者数を維持するには、計算上、さらに2300万人の高齢者が就職しないといけなくなりますので、高齢者の就業者数は3166万人となります。

2060年の65歳以上人口は3464万人と予想されていますので、労働参加率は91%です。これは、あまりに非現実的な数字でしょう。

すべての企業を守るのは絶対に不可能

次に、企業規模別の平均社員数で同様の思考実験をしてみましょう。

2016年の平均社員数は、大企業が1307.6人、中堅企業が41.1人、小規模事業者が3.4人で、全体の平均は13.0人でした。従業員数は全体で4679万人でした。

2060年までに、生産性年齢人口は約40%減るとされています。従業員数も同じ割合で減るとすると、4679万人から2807万人まで大きく減少します。

まず、すべての企業の社員数が同じ比率で減るとすると、平均社員数は大企業が785人、中堅企業が24.7人、小規模事業者が2人になり、全体の平均は7.8人まで減ります。各企業の平均規模が縮小するので、労働生産性も大きく低下します。

次に、すべての企業の社員数が同じ比率で減るのではなく、小規模事業者を優先的に守ったときに何が起きるか、見ていきましょう。

小規模事業者に勤める人の数は2016年と変わらず1044万人ですので、全体の従業員数2807万人から1044万人を引いた1763万人を、大企業と中堅企業で分けることになります。2016年と比べ、49%の減少です。

小規模事業者の生産性は大企業の41.5%しかありません。生産性の最も低い企業群で働く労働人口の比率が上がることによって、国全体の生産性は劇的に低下するでしょう。それに加えて、大企業と中堅企業の生産性もスケールメリットの後退によって大きく低下し、国全体の生産性をさらに押し下げるでしょう。

さらに、この1763万人の労働者を大企業から優先的に配分していくと、中堅企業に配分できる労働者は304万人まで減ります(1763万人-1459万人)。中堅企業に勤める人は86%も減少してしまいます。中堅企業が今の規模のままだとすると、中堅企業には7.4万社分の労働者しか配分できないで、45.6万社の中堅企業が廃業することになります。中堅企業は日本の技術の根幹なので、経済はガタ落ちするでしょう。

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