不幸な社員を生み出す会社の致命的な勘違い 「無関心」と「想像力の欠如」が不信感を増幅する

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組織の問題点を分析していくと、部署や職位、男女などで課題が異なることがよくあります。なぜならば、置かれている状況が変われば、抱える悩み、つまり、抱えるマイナス感情が異なるからです。

例えば、新人とベテランを例に考えてみましょう。入社して数カ月の新人は覚えなければならない業務に悪戦苦闘している一方で、入社5年以上の中堅社員は毎日同じ業務の繰り返しに飽きて転職を考えている、ということもあります。

また、部署の違いを例に考えてみましょう。営業部は業務繁忙でワークライフバランスの不満が高い一方で、管理部ではワークライフバランスは良好だが人事評価が不明確であることにストレスを抱えている、ということもよく起きています。

つまり、状況によって抱えるマイナス感情は異なります。それにもかかわらず、多くの会社が、全社員を対象とした施策を行おうと考え、かつ、いわゆる“手段”を考えることのみに思考が偏ってしまっています。「誰の」「どのような課題に対して」といった考えるべきプロセス(=ターゲティング)をすっ飛ばして、闇雲に施策を行っている状態です。

これでは、“全社員を救おうとした結果、誰も救えない”という最悪の状態に陥ってしまっても不思議ではありません。

組織改革の基本「WHO」「WHAT」「HOW」

組織が抱える課題を本気で解決するための施策には、必ず3つのカテゴリーを設定する必要があると私は考えています。

  • WHO(誰に向けた施策なのか)

1つ目はWHOです。つまり「誰に向けた施策なのか?」を明らかにすることです。優先的に、「誰の」または「どの層の」マイナス感情の蓄積を減らすためのアプローチを行うのか、しっかりと戦略的に設定することで、“当たり障りのない(ゆえに、効果の薄い)施策”と化すことを防ぐことができます。

  • WHAT(どの課題にアプローチしたいのか)

2つ目はWHATです。課題は常に1つとは限りません。複数同時に発生している課題に対して、優先順位を付けていくアプローチが必要になってきます。

  • HOW(どのようにアプローチするか)

3つ目はHOWです。一時的なプラス感情を生み出すための手っ取り早い施策に頼らず、 しっかりとマイナス感情と向き合ったうえで、施策を行っていく、それが組織の病巣を取り除くための近道です。

『「辞める人・ぶら下がる人・潰れる人」さて、どうする?』(書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします)

このWHOとWHATを明確に設定することが、「ターゲティング戦略」の基本です。 多くの会社で施策が裏目に出たり、手詰まり感を感じてしまう一因として、HOWへの偏重があるのではないでしょうか。

「誰の(WHO)」と「どの課題に対して(WHAT)」の設定がしっかりとできておらず、結果として当たり障りのない最大公約数的な施策を打ってしまったり、他の会社が導入してうまくいったとされる施策をそのまま導入しようとしたり、目新しい施策に飛びついたりしてしまう。それにより、従業員みんなを幸せにするどころか、誰一人のマイナス感情も減らすことができないという結果になっているように感じます。

手段(HOW)ばかり追いかけるだけでは、望ましい結果を得ることはできません。 会社が従業員のことを思って一所懸命考えて実行した施策が空ぶる、つまり「与える会社と離れる社員」という現象には、HOWへの偏重が大きく関係していると考えます。

上村 紀夫 エリクシア代表取締役、医師

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うえむら のりお / Norio Uemura

1976年兵庫県生まれ。名古屋市立大学医学部卒業後、病院勤務を経て、2008年ロンドン大学ロンドンビジネススクールにてMBAを取得。戦略系コンサルティングファームを経て、2009年「医療・心理・経営の要素を用いた『ココロを扱うコンサルティングファーム』」としてエリクシアを設立。これまで3万件以上の産業医面談で得られた従業員の声、年間1000以上の組織への従業員サーベイで得られる定量データ、コンサルティング先の経営者や人事担当者の支援・交流で得られた情報をもとに、「個人と組織のココロの見える化」に取り組む。著書に『「辞める人・ぶら下がる人・潰れる人」さて、どうする?』(クロスメディア・パブリッシング)。

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