不幸な社員を生み出す会社の致命的な勘違い

「無関心」と「想像力の欠如」が不信感を増幅する

現時点でマイナス感情を抱えている人が「幸せ」という高みを目指すのは、「背中に重りを抱えて山を登る」のと同じです。マイナス感情によって心身の状態が低下している人が、通常よりも大きなエネルギーを消費してまで山を登ろうとするモチベーションを見出すのは難しいもの。過度に「幸福の追求」を組織として押し付けようとすると、「重りを抱えた登山を強いられている」ような感覚を社員が持つのは当然の流れです。

この現象が起こると、社員は会社に対して不信感を持ち、ストレスが増加する、ということもよく起こっています。つまり、「いっぱい幸せを提供しさえすればみんなハッピーになる」というわけではないのです。マイナス感情が蓄積している職場に対し、マイナス感情を無視して、プラス感情を生み出しそうな施策を行っても、プラス感情が蓄積することはほとんどありません。マイナス感情がプラス感情に変換される可能性もほとんどありません。

そもそも、長期間蓄積されてなかなか消失しづらいマイナス感情とは異なり、プラス感情は一時的な効果しかなく、蓄積しづらいという性質があります。「多くのプラス効果は一時的であり、良いこと=当たり前になりやすい」という特性を考えると、「ポジティブな施策を足してプラス感情を蓄積させ、幸せをもたらす」ということがいかに難しいかおわかりいただけるかと思います。

さらに厄介なことに、プラス感情を生み出すための施策を過度に打ち出してしまうと、その状況に満足し、モチベーションは低いのに定着する=「ぶら下がり」人材が増えるリスクがあります。表面は幸せそうでも、真の意味で組織活性を上げることに直結しづらいのです。

「幸福度の追求」をするのであれば、何かを足してプラス感情を生み出すことからスタートするのではなく、組織の病巣であるマイナス感情の蓄積を解消すること、つまり重りを取り除くことからスタートすることが最も効果的な施策となります。

マイナス感情の解消を阻む2つの問題

では、組織内のマイナス感情を最小化することを阻む、最大の敵はなんでしょう? それは、「無関心」と「想像力の欠如」という問題です。

マイナス感情を最小化するためには、「ココロに関心を持つ」「マイナス感情の発生メカニズムを理解する」という大前提が必要です。私は、これまで多くの会社でマイナス感情が蓄積している原因を分析してきましたが、その結果わかったことは、「社員のココロに関心を持っている経営・人事・管理職が少ない会社であればあるほど、マイナス感情が蓄積している」というシンプルな事実です。

あなたは、周囲の人たちや部下のココロに、どのような関心を払っていますか? すでに関心を持っているのであれば、次に必要なのは、想像力を働かせることです。人に関心を持ち、マイナス感情を生み出す課題を見つけたとしても、それを解消する施策を考える際、相手がどのような感情を持つのか「想像」できないと、的外れの施策を行ってしまい、新たなマイナス感情を生み出してしまう可能性があります。

「社員のためにこの施策をやったのに、なんで喜ばないのか?」「何をやっても社員がマイナスに捉えて困る」といった発言の元になっているのが、「想像力の欠如」です。「無関心」と「想像力の欠如」が色濃く組織に残っている限り、離職・離脱への対策がうまくいかないのはもちろんのこと、マイナス感情の蓄積は止まらず、活性組織への道は遠ざかるばかりです。

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