PCR検査の実施数に対する陽性判明数の割合を示す陽性率は、名古屋市だけで計算すると7月後半は連日20〜30%で推移し、日によって50%を超えている。第1波の来ていた3月初めには60%の日もあったが、これはまだ検査態勢が1日10件前後にとどまっていた時期。現在は1日100件を超えるペースだが、そのうち2割から5割で陽性が出ている計算だ。1週間平均でも3割台に達し、愛知県全体にならしても当初「危険領域」と設定した週平均10%超(28日時点で13.9%)となるなど、数字を押し上げている。
これは第1に、母数である検査実施数の少なさが響いている。東京都、大阪府では1日2000件を超える検査態勢にたどり着いているのに対し、愛知県では直近で400〜800件、名古屋は市の衛生研究所で最大約80件のところ「民間や医療機関を含めてフル稼働」(浅井清文医監)状態でも200件ほど。この差が、陽性率で東京都の6.5%(28日現在)、大阪市15.3%、大阪府全体で10.1%(いずれも29日現在)といった数字に対して愛知・名古屋が高めに出る要素になる。
民間機関の場合、陰性なら届け出義務がない
もう1つの要因として、名古屋市は衛生研究所以外から報告されてくる数字が、陽性判明の数だけだという点が指摘されている。民間機関の場合、陽性の発生は市に届け出の義務があるが、陰性なら届け出義務がない。これは全国で同じ事情だが、名古屋市では「病院や民間機関も繁忙状態のため、市から陰性を含めたすべての検査件数を教えてくれとは言っていない」(感染症対策室)とする。
現在、衛生研以外の検査は半数近くに上っており、結果として全体に計上される検査件数は実態より少なくなり、陽性率は高めに出る。それでも「陽性率が急上昇しているのは事実で、市中感染が急速に広がっている証拠だ」と市の担当者は認めている。
実際の感染の広がりと、追い付けない検査や相談態勢。それがボトルネックとなって対応が後手後手に回り、市民の不安や不満、不信が高まる。例え軽症・無症状者が多いとはいえ、避けなければならない悪循環だ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら