27日に愛知県庁で開かれた対策会議(愛知県新型コロナウイルス感染症検証委員会)で、県はPCR検査能力を6月末の1日1374件から7月末には1472件に、10月末には1963件に引き上げる見込みを示した。県衛生研究所の能力を160件分、名古屋など保健所設置市の能力を248件分、増強するのだという。
が、医療関係者の委員からは「今の(感染増)ペースでは足らない。名古屋市ではいっぱいいっぱいで、県が主導して空いているところで対応するべきだ」「(PCR検査能力の)数は多ければ多いほど機能する」といった意見が投げ掛けられた。これに対して、県・市側からこの時点では明確な連携の形は示されなかった。また、医療機関分は6月末の739件から10月末に880件となる見込みだが、その他の民間検査機関分は6月末の135件から増える見込みがなく、官民の連携もまだ十分だとは言いがたい。
愛知県新型コロナウイルス感染症検証委員会の委員長で国立病院機構名古屋医療センターの長谷川好規院長は「名古屋での最初の対応は福祉施設などのクラスター対策だった。しかし、今は市中で行動力の高い若者が感染を広げ、徐々に高齢者にピークが移るという、世界が経験したのと同じような波が来ている。まだ重症者は少ないが、放置すればわれわれの手の届かないところに行ってしまう」と述べ、先を見据えた態勢づくりを訴えた。
正しい実態把握と正しく恐れる対策を
名古屋は第1波で、スポーツ施設や介護施設のクラスターを丁寧に追い、感染拡大を抑え込んだことは事実だ。発症2日前からの濃厚接触者の追跡も、後に国が認める手法となった。河村たかし市長はそれを「名古屋スタディ」「名古屋モデル」などとして誇った。その後、市と医師会が協力し、ドライブスルー方式のPCR検査所を開設するなど検査態勢の強化も進めた。しかし、今になって現れている数々の課題は、その一種の成功体験と現実との間に少なからぬギャップがあったことを示していないだろうか。
怖れるべきなのは、一時期の名古屋のように高齢の重症者、死者が続出することだ。今のところ、市内の病院や福祉施設で再びクラスターが発生した例はない。一方で介護関係者からは「日々発表される感染者数の大きな数字を怖れて、高齢者が本来受けるべき介護サービスを躊躇して、家に閉じこもってしまっている」という声が出ている。そうした弊害も考えると実に難しい局面だが、われわれ伝える側も含めて、正しく実態を把握し、正しく恐れ、正しい対策と連携づくりが進むことを望みたい。
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