コロナ恐慌で打撃「受ける人と受けない人」の境 コロナ以前の格差がさらに広がることになる

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先進国の集まる豊かな経済圏が危機にひんしているということだ。EUはアメリカの主要な貿易相手であり、ユーロという国際的に極めて重要な通貨を擁している。

見通しが特に厳しいのが南欧で、ここにはコロナでとりわけ大きな被害を受けた国が含まれる。EU第3位の経済力をもつイタリアは11.2%、第4位のスペインは10.9%、ドイツに次ぐ第2位のフランスは10.6%のマイナス成長が予想されている。

欧州委員会は、こうした予測は「外出制限が段階的に解除されることに加えて感染の第2波が起こらないこと」が前提になっているとし、下振れリスクに注意を促している。

一部では今年後半には回復傾向に弾み

ただ、EU域内では部分的に回復が始まっているとの指摘もある。「5〜6月の初期データは最悪の状況が過ぎたことを示唆している」と欧州委員会は述べ、「完全というまでには至らずとも、また加盟国間でばらつきがあったとしても、今年後半には回復傾向に弾みがつくだろう」としている。

OECDと欧州委員会の報告書がともに強調しているのが、政府介入の継続だ。EU首脳は7月17〜18日、数カ月ぶりに一堂に会し、7500億ユーロ(約90兆円)の復興基金案で合意を目指す予定になっている。加盟国に資金を注入し、経済回復を促す試みだ。

EUのパオロ・ジェンティローニ欧州委員(経済問題担当)は声明で、欧州各国政府はパンデミックによる被害の緩和に努めているが「格差、不平等、不安といった問題は今も続いている」と述べ、「経済再建策で迅速に合意する」ことが重要だと付け加えた。

OECDによれば、多くの国が企業に資金援助しているほか、働けなくなった人や失業者に所得を補填したり、給付を行ったりする制度の強化・拡充を進めている。コロナが世界経済の回復を脅かすなか、OECDは引き続きこのようなセーフティネットを維持していく必要があると述べている。

(執筆:Liz Alderman記者、Matina Stevis-Gridneff記者)
(C)2020 The New York Times News Services

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