6月26日に配信した「コロナに負けない『金持ち企業』トップ500社」ランキングには、多くの反響が寄せられた。
同ランキングでは、企業の財務健全性を示す指標として、ネットキャッシュ(現預金+短期保有有価証券-有利子負債-前受金)が多い会社を抽出したが、今度はその逆。手元資金に対して借り入れが大きい=ネットキャッシュのマイナスが大きい上場企業の上位500社になる。
各社の財務諸表に記された各項目から、ネットキャッシュを割り出した。例年は12月に同じ内容のランキングを公表しているが、足元のコロナ禍を受けて半年前倒しで最新版を発表する。
なお、自動車メーカーは自動車金融(ローン)事業を持っており、ネットキャッシュを計算すると見た目のマイナスが大きく膨らみ、実態を正確に示せない。そのため、トヨタ自動車、ホンダ、日産自動車などは前回に続いて今回もランキング対象外とした。金融系企業も原則除いている。
あのソフトバンクGも負債削減を推進
最新ランキングの1位は、ソフトバンクグループだ。ネットキャッシュは2020年3月末時点で9.8兆円のマイナス(前回は11.8兆円のマイナス)。2013年にアメリカの携帯会社スプリント(現・Tモバイル)や、2016年にイギリスの半導体設計大手アーム・ホールディングスを買収したことが巨額負債の原因となった。
ただ直近では、今年3月に自己株式取得と負債削減のために最大4.5兆円の保有資産を売却する方針を発表。その一環として、保有するTモバイル株式の3分の2を売却するなど、バランスシートの改善を進めている。
そのほか上位にはインフラ系や総合商社、不動産、鉄鋼メーカーなど、いわゆる重厚長大産業が目立った。ネットキャッシュのマイナスが1兆円以上は36社、同1000億円以上は179社だった。
ネットキャッシュのマイナスが大きいと財務の安全性が不安視されるかもしれないが、歴史的な低金利が続く中、借り入れを活用し、事業拡大のための投資に振り向けることは理にかなった経営スタイルだ。その一方、「コロナ不況」の深刻化が懸念され、決算上の業績は黒字なのに資金繰りが急速に悪化してしまう不安がないわけでもない。
ウィズコロナの資金繰りに配慮しつつ、アフターコロナに向けた成長の布石を打つことができるか。経営者は難しい舵取りを求められている。