コロナ恐慌で打撃「受ける人と受けない人」の境 コロナ以前の格差がさらに広がることになる
OECDの調査によれば、所得の高い労働者は所得の低い労働者に比べ在宅勤務できる可能性が平均して50%高い。また低所得労働者はエッセンシャル(生活に必須の)サービスに従事していることが多く、勤務中にウイルスにさらされる危険も大きい。
オフィスワーカーの多くにとって在宅勤務は今後も選択肢の1つになるだろう。しかし前線で働く人々にそのような選択肢はなく、失業のリスクはより高くなる。
調査からは、男性よりも女性が悪影響を受けている実態も浮かび上がった。女性は医療、小売りなどコロナが大きく影響した業種で労働力の大半を占め、男性に比べ不安定な仕事に就いていることが多い。OECDの報告によると、学校や保育所が広範囲に閉鎖されたことで女性が担う無償労働の負荷は高まった。
自営業者や派遣・パート労働者も急激な収入減に直面している。雇用主が売り上げの減少に対応しようと、契約を停止したためだ。
ロスジェネ化する若者
企業は採用計画を中断しており、若年層が全体的に取り残される危険もある。外出制限が実施されてからオンライン求人は半分以下に落ち込み、若者に実務経験を積ませるインターンシップも激減したとOECDは指摘する。
「今回の危機は仕事の世界を永久に変えることになる」と語るのはOECDのアンヘル・グリア事務総長だ。OECDにはアメリカ、フランス、ドイツも加盟する。「コロナ以前から存在していた格差が、この危機でさらに広がっている」(グリア氏)。
欧州連合(EU)加盟国でも、コロナがもたらす今年の景気悪化は従来の予想を上回って悲惨なものとなるだろう。
EUの執行機関、欧州委員会によると、EU経済は今年8.3%縮小する見通しで、5月に発表されたマイナス7.4%の成長率見通しから下方修正されている。同じ通貨を採用するユーロ圏19カ国に絞ってみると、今年の成長率はマイナス8.7%と一段と暗い見通しになっている。