脱げない「浅履きくつ下」がやたらと売れるワケ 2年で2000万足を売る異例のヒットの裏側

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男性向けは、ニットの深履きタイプが売れている(写真提供:岡本)

しかし、消費者だけでなく取引先の間でも「フットカバーは脱げるもの」という固定観念が定着していたため、言葉だけでは商品の実力は伝わらないと考えた。そこで商談の際、マネキンの足に靴下を履かせ、実際に引っ張ってもらうことに。すると、取引先は脱げない威力を実感して一様に驚いたという。これをきっかけに、パッケージやPR動画にも商品を手で引っ張った様子を採用することにした。

さらに「マーケティング投資を積極的に行った。例えばテレビCMの全国展開は会社史上初の試み」と、大林さんは語る。

販路開拓にも注力した。「もともと靴下は商品を目にして初めて『ついで買い』する人が多い。CMを見て欲しいと思っても身近な場所になければ購入につながらないので、どこでも売っている状態を目指した」(大林さん)。

靴下類はGMS(総合スーパー)の靴下売り場などに置いてあるのが一般的だが、ドラッグストアやスーパーなどへも販路を拡大したという。最近筆者も近所のダイソーで目にした。

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開発開始から販売まで4年かけ、稼ぎ頭となった同商品。メインとなる購買層は40~50代女性だが、20~30代、メンズの販売も拡大している。

女性向けの人気1位は、パンプスなどに合うシームレスの浅履きタイプ、2位はスニーカーに合うニットの超深履きタイプ。男性向けは、ニットの深履きタイプが売れている。他のアパレル製品と同様、自粛要請の影響で一時的に売り上げは落ちたが、6月以降は回復基調にあるという。

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同社は70年以上、靴下を製造してきたが、1998年頃より「さまざまな種類を作って売り場に置く」スタンスから、「足元の悩みに応えるものを届ける」方針へシフトしたという。消臭機能にこだわり累計1100万足を売る「スーパーソックス」など、その方針は徹底している。

確かに一般的なフットカバーは「脱げる」以外にも、ストッパーのシリコンでかゆくなるといった別の不満も聞く。強力な消臭効果を期待する人も多いだろう。5本指タイプの同商品が欲しいと思っている人も一定数いそうだ。筆者は「親指部分の穴あき問題」の改善をお願いしたい。

今、コロナ禍を機に消費者は「自分にとって真に必要なもの」の線引きがよりシビアになっている。どの悩みに焦点をあてるのか、次なる商品も楽しみだ。

佐藤 ちひろ ライター・エディター

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さとう ちひろ / Chihiro Sato

インテリア専門商社にて内装デザインや商品開発リサーチ等を担当後、美容系ECサイトや新聞生活情報面の編集に携わる。独立後は企業取材やライフをテーマにした企画を中心に執筆活動を展開。東洋経済オンラインでは「めちゃ売れ!コスパ最強商品はコレだ」「溺愛される商品にはワケがある」など消費財関連の連載執筆を担当。プライベートでは1児の母。

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