これまでもたびたび「脱げにくい」と謳う商品は出てきたがブレイクするものはとくに現れなかった。需要がある割には課題が解決されない状況が続き、次第に「フットカバーは脱げるもの」という共通認識が消費者の間に広がっていったように思う。そんな中、「本当に脱げない!」とSNSなどで話題となったのが、同商品だった。
筆者と同じく「フットカバーはすべて即脱げる」という担当編集者とともにパンプスとスニーカーで試してみたが、確かに商品名のとおり、脱げない! 筆者は1時間の歩行でも脱げなかった。「脱げないフットカバーなどこの世にない」と思っていた私たちにとってこれは驚きの結果だった。
差別化を実現した「コの字型ストッパー」
この「脱げる」問題を解決するべく、同社が開発をスタートしたのは、2014年頃だという。「室内では脱げないのに靴を履くと脱げる」という声が多かったため、同社は「靴と靴下の関係性」に注目。製造現場の見学やヒアリングを行い、靴の製造工程を確認した。
すると、靴の踵部分は成型機で踵にしっかり沿うよう作られており、足が抜けないようになっていることがわかったという。とくに踵の両サイドをがっちり抑えつけており、踵の内側は滑り止め効果を発揮するような素材が使われている場合が多いことも判明した。
「ならば、靴内部の滑り止めよりも強く踵の両サイドをホールドできる形状のストッパーを作ればいいということになり、角度などを何度もテストをして『コの字型ストッパー』(特許取得)が開発された」と、大林さんは説明する。
そう、このありそうでなかった「コの字型」が差別化の肝なのだ。筆者も今まで踵にシリコンのストッパーが付いている商品をいくつも試してきた。ドット型、波型、ボーダー型などさまざまな形状があったが、どれも脱げてしまったのは踵を抑える力が弱かったことが原因の1つだったようだ。
ただ、「微調整に苦労した」と、大林さん。ストッパーの素材は一般的なフットカバーと同様にシリコンを採用しているが、本体の素材選定に難儀したという。素材によってコの字がフィットしない、フィットしても締め付けすぎる、逆に締め付けが弱いと脱げてしまうなど、素材とストッパーとの相性が大きな課題となった。
1000足以上を試作した結果、オリジナルのニット素材と薄手のカットソー素材(シームレスタイプ)を商品化した。ストッパーがきちんと機能するよう、素材によりストッパーの貼り方やサイズも微妙に変えている。
こうして完成した自信も背景に、ネーミングには大胆にも「脱げない」という言い切りの表現を採用した。
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