ファミマが挑む"健康コンビニ"革命 調剤薬局一体型店舗で小商圏を囲い込む

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「店舗拡大による成長モデルは限界。既存客を深掘りする段階に入っている」と、東京大学大学院の伊藤元重教授は指摘する。国内市場が縮小する中、コンビニの出店加速で顧客争奪戦は激しさを増す一方。さらに異業種からの攻勢も激しい。4月からアマゾンが自社で酒類の販売を始めるなど、ネット通販企業が食品の販売を拡大している。「運送大手のデリバリー能力向上がネット企業に追い風となっている」(伊藤教授)。

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コンビニと調剤薬局が1つの店舗内に併存する(撮影:今祥雄)

ローソン、ファミリーマートは、店舗規模で圧倒的に優位な立場にあるセブン-イレブン、さらに品ぞろえでかなわないネット通販とも戦わねばならない。自社の店舗に足を運んでもらえるようなサービスの拡充が至上命題であり、その一環としてドラッグストア・調剤薬局との提携がある。

飲料のように持ち運びが不便でありながら差別化の難しい商品は、ネット通販に顧客を奪われかねない。一方、医薬品は必要な時にすぐ手に入ることが重要であるため、24時間営業で全国各地に店舗網を展開するコンビニの強みが生かせる。こうしたネット通販との差別化が可能な商品を強化することが肝要というわけだ。

調剤のデリバリーにも進出

差別化戦略は、単に医薬品を店頭に置いておくだけでは終わらない。ローソン初の直営調剤薬局併設店として2013年6月にオープンしたローソンホーム薬局西蒲田店では、在宅介護を受けている人に薬の出張調剤を行っている。周りのクリニックから紹介を受け、宅配する薬と一緒にコンビニのお菓子などを持って行くこともある。

ファミリーマートは現在12ある調剤薬局・ドラッグストアの提携先をさらに増やしていく考えだ。また、退院後の食生活に不安がある人へ健康に配慮した弁当や総菜を提供する取り組みを進めている。地域のボランティアと協力し、お年寄りの安否確認を兼ねた宅配ネットワークも構築中だ。

「買い物に遠くのスーパーまで出掛けることが難しいお年寄りが増え、家の近くのコンビニがより重宝されるようになる」(ファミリーマートの本多常務)。小商圏化を追い風に、健康コンビニは“ホームラン級”の売り上げをたたき出せるか。

「週刊東洋経済」2014年4月26日号(4月21日発売)では「小売り激変」と題した特集を掲載しています。

田嶌 ななみ 東洋経済 記者

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たじま ななみ / Nanami Tajima

2013年、東洋経済入社。食品業界・電機業界の担当記者を経て、2017年10月より東洋経済オンライン編集部所属。

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