「転職=攻め」と思っている人に欠けている視点 「転職のタイミング」とはいったいいつなのか

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つまりその場合は個人の実績と会社の実績としてのIPOにはあまり関連がなく、したがって会社のステージ的にはいい区切りではあるものの、それをもって個人の転職のタイミングやきっかけとして説得力があるかというとそうは思えません。

むしろIPO以降こそ会社も従業員も成長が問われるステージですから、そんなよい成長のチャンスを逃してまで転職するにはよほどの理由と覚悟が問われることとなりそうです。また、書かれている「転職=攻めのアクション」という箇所ですが、そこも認識を改めるべきかとは思います。

キャリアにおいて攻めは何も転職だけではありません。

転職自体はあくまでも目的を達成するための手段でしかありませんから、そういったアクションを起こすことが攻めなのではなく、攻めの目的に沿った行動が結果として攻めにつながるのです。また攻め、というからにはもちろん職業人としての成長のチャンスをつかみうるアクションということになります。

したがって、考えるべきことは現時点の勤務先での成長機会と外に出た場合の成長機会を比較することであり、どの場所にいれば自分を1番またはより咲かせることができるか、です。

成長機会の有無と「チャンス」を比較する

そう考えますと、ベンチャー企業にかかわらず、どんな職場においても転職を考えるべきタイミングというのは、そこでの成長機会の有無です。その場所で職業人として自分が成長できるチャンスがなくなっても、ほかの場所でよりよい成長機会がある可能性があるということです。ですから、現在の会社と外に出た際における成長機会の有無とチャンスを比較検討し、どういったアクションをとるべきかを考えるべきなのです。

もちろんその結果として転職につながる可能性もあるでしょうし、そうでなく今いる場所でもう少し頑張ってみる、または違うことにチャレンジしてみるなど、考えうる選択肢を冷静に比較検討したうえで攻めのアクションにつなげるのです。要はここでの主語は「自分自身」という個人であり、例えばIPOの主体である会社や勤務先ではないという事です。

キャリアを創るのはあくまでも個人ですから、当然ながら個人が主語であるべきですし、アクションの背景にも個人的な事情や理由があるべきなのです。佐々木さんは経営に近い立場で仕事がしたいという目標があるようですから、そのためにはどういった場所にいるべきで、自分は今何をするべきかを今一度考えてみましょう。そのうえで、自分がやるべきことを達成するには今の会社がよいのか、それとも外に行くのがよいのかを考えるべきです。

最終的に問われるのはどんな会社にいたかではなく、何を個人として成し遂げたかです。所属していた会社やその会社がIPOしたといったような付属の事項や事象と、個人の実績や経験は切り離して考えるべきです。

自分自身は今まで何をやってきて、今何をするべきなのか? そういった事をつねに自分自身に問うことで、おのずととるべきアクションも見えてくるはずです。佐々木さんが、ご自身の成長ストーリーを再び描き、自分ならではのタイミングでしかるべきアクションを起こされるであろうことを応援しております。

安井 元康 『非学歴エリート』著者

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やすい もとやす / Motoyasu Yasui

MCJ社長兼最高執行責任者(COO)。アニメーションの企画・制作を手掛けるベンチャー企業を経て、MCJにて東証への上場を経験。その後、経営共創基盤にて戦略コンサルタントして9年間活躍し、2016年3月にMCJに復帰。著書に学歴コンプレックスに悩みながらも独自の方法でキャリアを切り開いてきた様子を描いた『非学歴エリート』(飛鳥新社)や、自分ならではの人生を生きる術を描いた『極端のすすめ』(草思社)等がある。

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