そもそも保育園の役割は、就労する保護者の子を預かる、ただそれだけではない。
2015年度から施行された「子ども・子育て支援法」では、「子どもおよびその保護者が置かれている環境に応じて、子どもの保護者の選択に基づき、多様な施設または事業者から、良質かつ適切な教育および保育その他の子ども・子育て支援が総合的かつ効率的に提供されるよう、その提供体制を確保すること」とある。
同法の施行により「子ども・子育て新制度」がスタートし、保育園に預ける要件が拡大された。就労以外でも、「虐待やDVのおそれがあること」も認められたのだ。これにより市町村は児童福祉法に基づいて、その子どもを保育園で保育することになる。
また、厚生労働省による「保育所保育指針」にも保育園の役割が示されている。保育園とは、まず、「児童福祉法に基づき、『保育を必要とする』子どもの保育を行い、その健全な心身の発達を図ることを目的とする児童福祉施設であり、入所する子どもの最善の利益を考慮し、その福祉を積極的に増進することに最もふさわしい生活の場でなければならない」とある。
同指針は、保護者支援も重要視しており、「保育園は、子どもの保護者の意向を受け止め、子どもと保護者の安定した関係に配慮し、保育士の専門性を生かして援助する」としている。
そして、「子育て支援」として、「保護者に育児不安等が見られる場合には、保護者の希望に応じて個別の支援を行うよう努めること」と定めている。もし不適切な養育や虐待が疑われる場合には、保育園は市町村や児童相談所などに通告しなければならない。
外出自粛期間中に相次いだ事件
平成が始まってから終わるまでの間に、3世代が同居する世帯は、世帯全体の約15%から約5%へと減り、育児に祖父母の手助けを期待できる家庭は少なくなっている。児童相談所での児童虐待の相談対応件数は右肩上がり。2009年度の4万4211件から2018年度は15万9850件になり、この10年で約3倍になっている。保護者の置かれる育児環境は変化しており、それを保育園がカバーするよう法や指針が後押ししている。
コロナ禍での外出自粛の期間中、乳幼児への虐待や死亡に関して父母が逮捕されるニュースが目立った。つい最近も、東京都大田区で3歳の女児が8日間も1人置き去りにされ、飢餓と脱水で死亡した痛ましい事件が起こったばかり。母親は保護責任者遺棄致死容疑で逮捕された。6月は、茨城県ひたちなか市で3歳の子を自宅のドラム式洗濯乾燥機に1時間半閉じ込めて脱水症状にさせたとして父親が逮捕された。
別のケースだが、まさに、地方のある認可保育園では、ふいに園児が発した「洗濯機に落ちた」という言葉を軽視せず、虐待やネグレクトはないかと親子の見守りを徹底していた。
その保育園では、コロナ禍の中、普段より一層、保護者に目を配ったという。保護者には医療従事者、自営業、工場労働者が多く、仕事を休めなくても約7割が登園を自粛した。5月の連休明けには、「そろそろ限界がきているだろう」と、とくに育児に心配がある家庭に電話し「大変だろうから、おいでよ」と、登園を促した。
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