「子どもを預かろうとしない」保育園への大疑問 子どもを預けるのは「親の甘え」なのか?

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5月25日に緊急事態宣言が全国で解除され、6月から多くの小学校では登校が始まり、保育園も利用自粛モードが解けていった。明美さんの子どもたちも保育園と小学校に通うようになり、「保育園や小学校のありがたみが改めてわかる。やっと仕事ができるようになった」と安堵している。そして、明美さんはコロナ禍の自身の体験から、「保育士は多くの父母を救うことができる、誇りある職業だ」と、改めて思うのだった。

その反面、「次郎の保育園は、まるで親子を突き放すようだった」と、地元の公立保育園の対応には納得がいっていない。

最近、近所の公園で明美さんが保育園のママ友と会ったとき、こんな話を聞いた。ママ友は看護師で出勤せざるをえない状況だった。ママ友の夫は在宅ワークになったが仕事が忙しく、子どもに1日8時間もDVDを見せ続けてやり過ごしていた。

保育園の存在意義を改めて問い直すべき

東京大学大学院教育学研究科附属発達保育実践政策学センターの調査では、コロナ流行以前に比べて、子どもへの接し方や育児方法が「かなり変わった」と7割が答えた。そのうち7割弱に精神的健康度が良好でない状態にあったことがわかった。

就学前の子どもの7割強で動画の視聴時間が増加。テレビやスマホ、ゲーム画面を見る「スクリーン・タイム」は、5歳以上で約半数の子が、普段より1日2時間以上増えていた。子どものスクリーン・タイムが2時間以上増えたという保護者の中で、精神的健康状態が良好でない状態がとくに多かったという。

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明美さんは、「週に2日でも保育園が預かってくれれば、見える景色はまったく違うものになる。保育園の存在意義を、改めて問い直さないといけないのではないか」と語る。

この道30~40年という現役の園長たちは「保護者と顔を合わせる毎日の送り迎えのときに、ちょっとした会話を重ねていくことで、保護者が育児に前向きになっていくものだ。虐待が心配な親にこそ、保育士の腕の見せ所がある」と口をそろえる。だからこそ、保育士が気持ちに余裕を持てるように、労働環境や労働条件を整備することが必要なのだ。

コロナに関しては保育の現場から「危険手当」や「慰労金」を望む声が大きい。現在、東京都練馬区、福岡県飯塚市、岡山県倉敷市などで独自に保育士に慰労金を支給することが決まっている。本来は、国が保育士に慰労金を出してもいいはずだ。

7月に入って連日、多くのコロナ感染者が報告されている。保育園での感染リスクがゼロにはならず、かといって親子を締め出してしまえば、虐待のリスクが高くなるジレンマがある。

今後、少しでも「3密」にならないような保育を実現するためにも、そして保育の質を向上させるためにも、ゆとりある保育ができる態勢の整備は不可欠だ。充分とはいえない、保育園の面積基準や保育士の配置基準の改善について、今こそ見直すべき時がきているのではないか。

小林 美希 ジャーナリスト

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こばやし・みき / Miki Kobayashi

1975年、茨城県生まれ。株式新聞社、週刊『エコノミスト』編集部の記者を経て2007年からフリーランスへ。就職氷河期世代の雇用問題、女性の妊娠・出産・育児と就業継続の問題などがライフワーク。保育や医療現場の働き方にも詳しい。2013年に「『子供を産ませない社会』の構造とマタニティハラスメントに関する一連の報道」で貧困ジャーナリズム賞受賞。『ルポ看護の質』(岩波新書、2016年)『ルポ保育格差』(岩波新書、2018年)、『ルポ中年フリーター』(NHK出版新書、2018年)、『年収443万円』(講談社)など著書多数。
 

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