新型コロナウイルスの影響が、労働者の給与や雇用に及んでいる。営業自粛で休業となり、給与が減っているのは、企業や店舗に勤める人だけではない。働く親を支える保育士の賃金カットが行われ始めている。
登園する園児が少なくなったことで休業となった保育士から「賃金カットされた」「無給になった」「給与がどうなるのかわからない」という不安の声が聞こえる。
しかし保育園においては、実はその対応は“適切”とはいえない。各関係者への取材から実態に迫る。
「特別休暇で時給は出ますから」
「もし賃金カットされるのであれば、たとえ来るなと言われても出勤するだろう」
都内の私立の認可保育園で働く保育士の佐藤真一さん(仮名、32歳)の気持ちは穏やかでない。というのも、新型コロナウイルスの感染予防で登園を自粛する園児が半数を超えてきたため、園側から「特別休暇を取ってください」と言われたからだ。
佐藤さんはフルタイムで働いているが、1年契約を更新する非常勤職員だ。時給は1200円。月収は20万円に満たず、手取り十数万円で1人暮らしをしている。普段から家計を切り詰めて生活しているが、収入減となれば打撃が大きい。
園長からは、「特別休暇で時給は出ますから」とは言われたものの、確実に100%保障されるのかどうか、聞けなかった。佐藤さんは「もし要求するようなことを言って煙たがられれば、次の契約更新がなくなるのが怖い」と胸の内を語る。
4月7日の政府による緊急事態宣言を受け、東京都は区市町村に向けて保育園の対応を通知。感染防止のため休んで家にいられる保護者には登園を控えてもらうようお願いし、「保育等の提供を縮小して実施すること」と、「医療・交通・金融・社会福祉などの社会生活を維持するうえで必要なサービスに従事し休むことが困難な保護者には確実に保育を提供し、感染症防止に万全の対策をすること」を要請した。
多くの区市町村が、保育園を利用できる保護者を、①社会インフラを支える医療従事者などの職種、②どうしても休むことのできない保護者、③ひとり親家庭、などに限定したうえで、基本的には、それ以外の保護者に「自粛要請」している。その他、個別の事情に応じて保育することとしている。
区市町村によっては原則として「臨時休園」にしている。例えば世田谷区や荒川区は、区内の保育園などをすべて「臨時休園」とするが、前述の①、②、③の対象者は「応急保育」を申し込む形で保育を受けられる。「自粛要請」の地域と同様、休めないなど個別の事情に応じて保育は受け付ける。
佐藤さんが勤める保育園がある自治体では保育園は休園にはならず、原則開園して保護者に利用自粛を求めている。緊急事態宣言が発令されて1週間も経つと、次第に登園児が少なくなり、保育士全員が出勤しなくてもいい状態となった。そこで園長から、交代で休みをとるよう命じられたのだった。
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