コロナで保育士の「給与4割カット」は大問題だ

混乱の中、間違った運用が横行している

社会福祉法人や株式会社などが運営する私立の認可保育園には、園児の年齢や地域、保育園の定員規模によって保育に要する単価を指す「公定価格」に基づいて計算された運営費である「委託費」が、国、都道府県、市区町村の税金と保護者が支払う保育料から支給される。

これは毎月1日の在籍児数に基づいて計算される。委託費の8割が人件費であり、国が示す2020年度の保育士の年間賃金は全国平均で395万円となる(処遇改善費や法定福利費を含まない)。

委託費は基本的な人件費、事業費、管理費となる運営費のほか、保育の体制に応じて「加算」がつく。例えば、3歳児の保育士配置基準は子ども20人に対して保育士1人(20対1)だが、それを15対1にして人員体制に厚みを持たせている場合は加算がつき、保育園の収入が増える。もし、コロナの影響で保育士が出勤できず要件を満たせなかったとしても、特例として加算分も減らさずに支給される。

委託費の給付関係を所管する内閣府の担当者は、

「コロナの影響で保育士が辞めることなく体制を維持できるように特例を設け、公定価格に含まれる保育士の人件費をはじめ処遇改善加算なども“満額支給”している。市区町村からの自粛要請に合意し、登園する園児の数に見合った保育士の人数だけ出勤とする場合の休業者や、感染者や濃厚接触者の休業、休園のいずれの場合でも、給与を減らさず支給するものと想定して委託費を減らさずに支給している。ノーワークノーペイという状況は想定していない」としている。

つまり、国は人件費を含む運営費を満額出しているのだから、「ノーワークノーペイ」という判断は好ましくないのだ。

ちなみに、公立保育園で働く保育士が休業した場合、少なくとも常勤職員は満額の給与が支払われる。

「雇用調整助成金」を申請できる要件は

3月1日に人事院と総務省が出した通知によって、①コロナ感染した、②職員や家族に発熱などの風邪症状があるため、出勤しないことがやむを得ない場合、③小学校や保育園が臨時休業になって子の世話をする職員の3つの場合を対象に「特別休暇」が設けられた。

国家公務員については常勤・非常勤を問わず有給(賃金100%)となる。保育士は地方公務員になるため、実際の非常勤の支給範囲は各自治体が決めているが、総務省は「常勤・非常勤を問わず国家公務員と同様の有給(賃金100%)にするよう助言している」と話す。

また、私立の認可保育園の事業者には「雇用調整助成金」や「新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応助成金」の助成金を活用する動きもあるが、そもそも、休んだとしても人件費分の“収入”があるため、助成金を申請することは適切なのだろうか。

そもそも「雇用調整助成金」とは、雇用維持のための対策として、売上高が前年同月比で5%以上低下した事業者で、労働者を1人も解雇せず休業を行った場合に、1人1日当たり8330円を上限に助成金が企業に対して支払われる(フリーランスは個人が直接申請)。

厚生労働省によれば「例えば、保育園のなかでも、公費による収入がない認可外保育園であれば、登園自粛や休園に伴い利用料を保護者に返金するなどして前年同月比で5%収入が減るなどの要件を満たせば、雇用調整助成金を申請できる。

一方、認可保育園の場合は、公費にあらかじめ人件費が含まれ、売り上げに当たる『委託費』が100%保障されており『売り上げ』は減らないため、要件を満たさず、雇用調整助成金の対象にはならない」と説明する。

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