8万9000人超と、ASEAN諸国でダントツに新型コロナウイルス感染者数が多いインドネシアで、感染拡大に一向に歯止めがかからない。1週間で医師14人がコロナウイルスに感染して死亡したり、東ジャワ州の州都スラバヤでは感染者向けの医療機関のベッド数が不足し始め、万が一に備えてシンガポールに近い離島に搬送する計画に着手したりと、医療崩壊の瀬戸際に追い込まれようとしている。
3月に入るまで感染者ゼロが続いていた。ところが、3月2日に国内でインドネシア人の初感染者2人が確認されると事態は一変した。慌てて感染の拡大防止策に取り組んだものの、それまでの無為無策があだとなり、政府の対応も医療・保健当局の動きも二転三転。その結果、瞬く間に感染者数、感染死者数(約4320人)はASEANで断トツの最多記録となっている。
大統領も危機感をあらわに
ジョコ・ウィドド大統領は6月18日の閣議で全閣僚に対して、「政府は2億6700万人の国民に対する責任を負っている。閣僚は現在が異常事態であるとの認識を深め、コロナ対策に積極的、スピーディに取り組んでほしい。さもないと内閣改造も辞さない」と閣僚更迭をちらつかせながら叱咤激励。危機感をあらわにした。
インドネシア医師協会(IDI)は7月13日に報告書を発表し、これまでにインドネシア全土で少なくとも61人の医師がコロナ感染で死亡していると発表。7月の第2週の1週間だけで14人が死亡し、これは1週間の医師の死者数としては過去最高になったとしている。死亡した医師の多くがインドネシアで最も感染者数が多い東ジャワ州の医療機関で働いていた医師としている。13日だけでも5人が死亡したという。
また、インドネシア看護師協会(PPNI)もこれまでに全国で看護師少なくとも43人がコロナ感染で死亡し、400人以上の看護師の感染が確認されたとしている。このうち東ジャワ州での看護師の感染者は277人と最多を記録している。
医療従事者の感染者が増えている背景として、IDIやPPNIでは防護服、手袋、マスクなどの防護機材の絶対的な不足に加えて感染者数の急増による長時間、過剰労働という環境が疲労を蓄積させて感染リスクを高めていると分析する。
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