約9万人が感染「インドネシア」で起きている事 1週間でコロナ前線医師14人死亡する悲劇も

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このため一時解禁した日曜日の市内主要通りの歩行者天国はたった1日で再度禁止となり、健康増進に寄与するとして日曜日に臨時設置された主要通りでの自転車レーンも3回で中止となるなど、朝令暮改の拙速ばかりが目立つ。

ジョコ・ウィドド政権も不手際が多い。激増する失業者対策として打ち出した一定のオンライン講習を修了すれば現金補助が得られる「プレワークカード」政策は、不正申請やオンライン不具合などで中断に。

担当の経済調整庁の担当者は、「問題点は解消され、新たに7月末からはプレワークカードの再登録を開始する」と今後は救済策が軌道に乗るとの見通しを明らかにしている。コロナ対策とは無縁の国是「パンチャシラ」に関する法案が国会で審議されるなど、「コロナの対策不十分で危機感欠如」と指摘されている。

「失業して生活が苦しいのに政府はまったく支援してくれない。支援は米や食用油、卵などの食料品の配布だけで、それも10日分だけである。どうやって生活していけというのか」と市民の間からは不満が高まっている。

政府のコロナ対策に約9割が不満

7月7日から11日にかけて主要紙「コンパス」が実施した緊急アンケートの結果、「政府・閣僚のコロナ対策」に不満を表明したのは87.8%となっており、医療崩壊の危機にあるとされる医療関係者などへのマスク・防護服の配布に関しても「不十分ないし適正に配布されていない」と75.1%の人が考えていることが明らかになった。

「現在ジャカルタ州政府やインドネシア政府が取っている感染拡大防止対策を緩和するという方向は間違っている。コロナは依然としてコントロールするに至っていない以上、緩和ではなくむしろこれまで以上に制限を厳しくしなければならない」と、インドネシア大学疫学専門家のトリ・ユニス・ワヒュオノ氏は地元マスコミにコメント。社会・経済活動の一時停止、人々の不要の外出制限などに再度踏み切るべきだとの考えを示した。

インドネシア大学の別の疫学専門家、シャフリル・ファリフ氏も「コロナ感染が完全にコントロールされておらず、第2波どころか第1波がまだ継続中である現在の深刻な状況を政府がまったく理解していないことを示している」と指摘。規制緩和ではなく、規制強化を訴えている。

大塚 智彦 フリーランス記者(Pan Asia News)

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おおつか ともひこ / Tomohiko Otsuka

1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からはPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材執筆を続ける。現在、インドネシア在住。著書に『アジアの中の自衛隊』(東洋経済新報社)、『民主国家への道、ジャカルタ報道2000日』(小学館)など。

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