約9万人が感染「インドネシア」で起きている事 1週間でコロナ前線医師14人死亡する悲劇も

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ガラン島はシンガポールに近いリアウ諸島州にある約80平方キロの島で、かつて1980年代にはベトナムからの難民「ボーピープル」を収容する施設があった。現在は、リアウ諸島州の感染者を集中的に収容して治療に当たっている。ガラン島へのスラバヤからの感染者移送には空軍機をあてて、感染拡大のリスクを軽減するとしているが、遠方への移送・治療には感染者の家族や知人などからの反発が予想されている。

スラバヤの市民からは「見舞いにも行けない、知り合いがいないガラン島への移送など問題外である。それに万が一の時はどうするのだ」と早くも反対論が噴出している。

病床不足が現実問題になりつつある

もう1つのエピセンターとされるジャカルタ州でも感染者増加に伴い収容する医療機関の病床数が急増している。ジャカルタ州のアニス・バスウェダン州知事は7月の第2週だけでコロナ治療指定医療機関の「集中医療室(ICU)」の659病床と、隔離病棟の4556病床がコロナ患者に使用され、その前の週に比べて11%増加したことを明らかにした。

地域の各保健所でのコロナ検査で陽性反応がでた患者が次々と発見され、その感染経路追跡でまた新たに感染者がみつかるという状況が続いているためとしている。中・軽症の感染者が増えているのが現状といい、この水準で感染者が増えると、病床不足が現実問題として浮上してくることになると懸念されている。

アニス州知事は「検査態勢、感染経路追跡を強化しており、その結果として自覚症状のない感染者が次々と見つかっているのであり、必ずしも感染が爆発的に増加しているという訳ではない」と分析している。

こうした中、アニス州知事は7月16日までとしていた大規模社会制限を今月末まで延長すると表明。これにより、映画館などの営業再開が遅れることになる。

アニス州知事は6月4日に社会制限の緩和をすると発表し、伝統的な市場やショッピングモール、飲食業、工場、事務所などは一定の制限の下(検温、手洗いなどの保健衛生上のルールや出勤者、店内客数は定数の50%とするなど)で営業再開となった。しかし、規制緩和を規制解除と誤解した市民がマスク非着用で市内にあふれるなどして、感染者数の増加に歯止めがかからない事態が続いている。

そもそも規制緩和は疫学専門家や医療関係者の助言があったわけではなく、市民の不満が社会的不安を高めデモや暴動、略奪といった騒乱状態になるのを回避するためという政治的社会的理由が優先した結果とされている。

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