約9万人が感染「インドネシア」で起きている事 1週間でコロナ前線医師14人死亡する悲劇も

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責任感の強さから、大半の医師や看護師は感染の有無を確認する検査すら受ける状態にないと指摘。政府に対し手遅れにならないうちに緊急の対応策を講じない限り、「医療崩壊が現実のものになる」と警告している。

全34州の中で感染者数が最も多いのはジャカルタ首都特別州だったが、6月13日に感染死者数で東ジャワ州がジャカルタを抜き、26日には感染者数でも東ジャワ州がトップに。以後同州がインドネシアのエピセンターとなっている。

7月21日現在、感染者数・感染死者数は東ジャワ州が1万8828人・1461人で次いで数が多いジャカルタ州は1万7279人・748人となっている。

マスク着用など対策徹底できなかった

なぜ東ジャワ州で感染爆発が起きたのか。学者や政治家がいろいろな分析を試みているが、明確な理由は不明だ。ただ当初の時期、感染拡大が緩やかだったことから住民がマスク着用、手洗い励行、社会的距離の確保などの保健衛生上の対策を真剣に実行しなかったことが指摘されている。

州政府、州都スラバヤの市当局などが各種経済社会活動を制限する大規模社会制限を6月8日に終了させ、順次緩和方針に転換してしまったことも一因とされる。

東ジャワ州では6月8日に6313人だった感染者数が、緩和後1カ月の7月8日には1万4967人と2倍以上に激増。急増する感染者を収容するスラバヤ市内を始めとするコロナ治療指定病院や医療施設では感染者用の病床の不足という問題に直面している。

こうした事態にスラバヤのリスマ市長は関係者との集会で突然土下座して「ごめんなさい、許してください。私の力不足でこうした事態になってしまって」と涙を流して謝罪。この場面はニュースでも大きく取り上げられ、「コロナ対策に真剣に取り組む市長が思わず感情的になったもの」として好意的に報じられた。だが、土下座や涙は東ジャワ州、スラバヤのコロナ感染拡大防止には何の効果もみせていない。

こうした事態に東ジャワ州出身でもあるムハジル・エフェンディ調整相(人間文化開発担当)は6月30日に「スラバヤの医療機関、医療関係者の荷が重くなってきており、今後は感染者をガラン島の感染者収容施設に移送することも考える必要がある」との見解を明らかにした。

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