「もしコロナの第2波がきて、また保育園や学校が閉じてしまったら、どうなるか。何らかの差し迫った理由で保育を必要とする家庭には、保育園を空けることも必要ではないか。もし、次郎だけでも保育園に行けていたら、心の余裕はまるで違ったはず」と、明美さんはつぶやく。
極端に選別された「預けられる家庭」
振り返れば、緊急事態宣言下で自治体によって「臨時休園」か「利用自粛の要請」となるなか、預けられる親は“選別”された。
原則として優先されたのは、社会インフラを支える職業である医療従事者や交通、福祉、スーパーなどで働く“エッセンシャルワーカー”の保護者。ほかには、ひとり親家庭、どうしても休めない家庭などに保育が提供されたが、自治体により預かる範囲には明らかにバラつきがあった。
保育士の中には「両親ともにエッセンシャルワーカーである場合しか、絶対に預かってはいけない」と思い込むケースも。ほかの職業の保護者が仕事を休めなくても登園を拒否したという例もあった。そうした事態に、東京23区のある区では「必要な家庭には保育を提供するように」と注意喚起する通知が出たほどだ。
こうした問題が出る背景には、そもそも保育士が考える「保育の必要性」が、かねてより二極化しがちなことがある。「よほどの理由がない限り、預かる必要はない」と考える保育園や保育士が一定数、いるのだ。
筆者の取材の中では、「保育園に預けられる子がかわいそう」だと、日々の保育時間はもちろん、延長保育や土曜保育の利用を厳しく制限する保育園もある。親が休みの日だと、保育園で行事があったとしても登園を認めない保育園もある。
「保育園が親の育児力を奪うから、いくら大変でも在宅ワークなら預からない」と、きっぱり言う保育士すらいるのだ。
親が休みの日や在宅ワークの日に「家で子どもをみるのは大変」と言う保護者がいると、保育園の休憩室や、匿名のSNSでは「あんたの子でしょ。だったら産むな」「愛情ないわけ?」という保育士の本音が飛び交うことはザラにある。
もちろん、子どもを保育園に預けて遊びに出かけることが、あからさまにわかるような親がいることも事実だ。しかしそれは一般的な例とはいえない。育児と仕事の両立の大変さに悩んで、保育園に預かってほしいと考える親が大半だろう。
こうした中、子どもを保育園に預けたいというのは「親の甘え」であるかのように考え、もし“門前払い”してしまえば、親がネグレクトや虐待に向かう可能性だってある。
そうしたことを考え、「家庭環境を考えると、せめて保育園で楽しく過ごしてもらいたい。子どもと向き合っていくためにも、親が自分の時間をもつことも大切だ」と、親が休みの日でも積極的に預かろうとする保育園もある。それは、目の前にいる子どもの最善の利益を考えてのことだが、保育園によって対応にあまりにバラつきが大きすぎる。
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